このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第89時
実習17 地震の揺れ方(初期微動継続時間)2013 3 14(木)、15(金)
理科室はじめに
震源における地震の揺れ方は複雑です。多様な地震波が混合しているからです。混合波は四方八方へ広がっていきますが、その過程で自然に分離するものがあります。伝播速度の速いもの(縦波、初期微動)と遅いもの(横波、主要動)はその代表です。混合したものが純粋なものに分かれていく、という考え方を理解すれば、震源からの距離と初期微動継続時間が比例していることをより深く理解できます。他年度の実践
・地震のゆれ方 1年(2002年)(地震計のしくみ)
・実習1 地震の伝わり方 1年(2002年)
・地震のゆれ 3年(2001年)
・初期微動継続時間 3年(2001年)
本時の目標
1 地震は、初め小さく縦にカタカタと揺れ、次に大きく横にユサユサと揺れることを確認する
2 地震波は、P波(初期微動)とS波(主要動)に分解されることを知る
3 震源からの距離と初期微動継続時間は比例することを理解する
4 複数の地点の地震波のグラフから、地震発生時刻を求める準 備
生 徒 教 師
- 筆記用具
- 教科書、理科便覧、ファイル
- 色鉛筆
- 定 規
- 本日の学習プリント(1/人)
- 検印、スタンプ
- ひ も
- つる巻きばね
- 分 銅
授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)
(2) 地震の揺れ方の演示 (4分)
この導入は、先生のパフォーマンスにかかっています。自分を捨てることができる先生は1度試してください。生徒の心を鷲掴みにすることができます。また、代表生徒に演示させても良いでしょう。「みなさんは地震を体験したことがありますか? ある人は手を挙げてください。・・・ほとんどの人があるようですね。では、地震の揺れ方には2種類ありますが、それを体験した人はいますか? ・・・あれっ、誰もいないの?! 地震の揺れ方には縦揺れと横揺れがあることを知っている人は? なるほど、言葉だけは知っているようですね。
では、先生が実演して見せましょう。地震の揺れ方は決まっていて、初め小さく縦にカタカタと揺れ、次に大きく横にユサユサと揺れます。こんな感じです。」・・・といって、自分を捨てて演じる! その後、クラス全員で縦揺れと横揺れの練習をしたり、代表生徒に演じてもらったりして、地震を模擬体験する。生徒によって振動数や揺れ幅が違うことを指摘させると、さらに盛り上がる。
したがって、地震を感じたとき、天井を見上げてもはっきしりません。上から吊るされたものはぶらぶらしません。揺れはじめは縦揺れなので、それを確かめるためにはテーブルにある小さなものを調べましょう。小さく縦にジャンプしていれば地震が発生しているので、しばらくすると大きな横揺れに変わります。横揺れになると、天井から吊るされたものが左右に揺れたり、固定されていないものが倒れることになります。」
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上:代表生徒による地震の演示できる先生は、続けて(3)のパフォーマンスを楽しんでください。
(3) 地震計による記録のパフォーマンス (3分)
地震計の記録を板書する時も、先生のパフォーマンスで理解度が変わります。頑張ってください。ポイントは、真面目な顔をして小刻みに縦揺れ(初期微動)することです。
「次に、地震計で記録する原理を紹介します。(右手に白チョークを1本持ち、生徒の方に顔を向けて)地震計には1本のペンがついています。本当はこのペンは動かず、記録用紙が回転するように動きますが、今日は先生が動きます。先生が動くスピードと方向は一定で、左から右へ一定の速さで移動します。本当は、黒板が一定のスピードで動くわけですが、今は、地震計を動かしてみましょう。
(生徒に顔を向け、黒板を見ないようにして、右から左へゆっくり歩きながら1本の線を書きながら)こんな感じで1本の線ができます。これは地震がないときです。(話をしている時も一定の速度で歩きながら線を書きながら) あっ、地震だ! (全身を硬直させ、首を小刻みに上下させます。初期微動です。・・・生徒から大歓声を受けますが、動じてはいけません! 小刻みに上下しながら、ゆっくり歩き続けます。その結果、黒板に小さな波がある線が記録されます。真面目な顔をして声を震わせながら解説を続けます) これは初期微動ですが、次に主要動がきます。来たー!
(体を横に大きく揺すりながら、腕を上下に大きく動かして波を書く。ただし、歩くスピードは変えないように。これは練習しないとできな技なので、誰もいない教室で練習してくださいね。) ようやく、地震がおさまってきたようです。(といいながら、腕の揺れ幅を小さくしていきます。) ふー、生き返りました! (お疲れ様でした)
上:黒板全面を使って示した地震計の記録
(この方法は、2つの間違いを含んでいます。1つは横揺れ(主要動)を記録できないこと、もう1つは実際に動くのは記録用紙であり、ペンは動かないことです。これらの問題点は(5)で説明します。先生のパフォーマンスが高ければ、この問題点に気付く生徒はいないでしょう。)(4) 初期微動と主要動 (7分)
(3)の記録を使うこともできますが、調子にのって乱れ過ぎた場合は書き直しましょう。さて、初期微動と主要動をまとめるポイントは、色鉛筆で区別させることです。1色は初期微動、もう1色は主要動として統一します。この授業時間だけでなく、全ての場面で統一させます。また、さくさく進んでください。覚えるために時間を使ってはいけません。時間があれば、次の(5)縦波と横波の違いを演示したり実験したりしましょう。
上:初期微動を主要動を示した板書
上:縦揺れと横揺れの違いを図示した板書(左下端と右下端)
縦波と横波ができる理由
震源で発生する地震波は多様ですが、そこから伝播する過程でいくつかの波に分解されていきます。縦波は速く、横波は遅い、という単純な理由によって、初期微動(速い)と主要動(遅い)ができます。したがって、震源から近い場所は多様な波が分解されませんが、遠い場所は初期微動継続時間が長くなります。また、地震波の記録は、3つの方向に分解して記録されます。これは授業冒頭(2)で行った地震計のパフォーマンスからも明らかです。
写真右のように、黒板左から右へ記録する場合、縦揺れ(初期微動)は記録できますが、横揺れ(主要動)は記録できません。横揺れは、黒板下から上へ(あるいはその逆)へ向かって記録します。そのとき、体を左右に揺すれば横揺れとして記録できます。
(5) 縦波と横波を調べよう! (7分)
縦波と横波の違いは別ページ『実験9 縦波・横波1年(物理学1999年)』、地震計の不動点は別ページ『地震のゆれ方1年(2002年)』を参考にしてください。(6) 複数の地点で観測した地震波のグラフ (13分)
3つの地点で観測したある地震の記録を1つのグラフに書きます。グラフの縦軸は『観測した地点と震源の距離(km)』、横軸は『時間』です。ここで工夫した点は横軸です。原点をゼロではなく、-10秒としました(1目盛り10秒)。また、横軸は『時刻』にすることもできましたが、初期微動継続時間に着目させたいので、あえて単純な『時間』としました。なお、今回取り上げた地震は、2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震です。学習プリントに印刷しておいたものは仙台(震源からの距離90km)と日立(震源からの距離270km)、生徒に書かせたものは福島(震源からの距離190km)です。
グラフを指導するときのポイント
1 グラフの縦軸と横軸の意味をおさえる
2 初期微動と主要動を色分けさせる
3 初期微動が始まったところに小さな点を打たせる
4 2つの地点(仙台と日立)で初期微動が始まった点を定規で結ばせる
5 主要動が始まったところに小さな点を打たせる
6 2つの地点(仙台と日立)で主要動が始まった点を定規で結ばせる
7 4と6の直線が、時間軸(横)のゼロで交わることを確認する
8 7は以下のことを示す
(1)震源では、初期微動と主要動が区別できない
(2)震源に近づくと、初期微動が短くなる
福島の地震波を書かせるポイント
1 学習プリントにはじめの部分、および、最後の点を印刷しておく
(上の学習プリントをクリックすると、最後の点がわかります)
2 はじめの部分と最後の点を、定規で薄く結ばせる
3 2の線上に、初期微動と主要動を書く
4 初期微動と主要動の揺れ幅は、いずれも仙台と福島の中間
5 初期微動と主要動に色をつける
6 2の線を消す
上:福島の地震波の記録を書く生徒(7) (6)のグラフからわかること (10分)
(6)のグラフからわかることを発表させます。ただし、福島の地震波を正しく書けている生徒は、以下にまとめたことを理解していると考えて良いでしょう。つまり、ほぼ全員が理解できているわけです。
上:A組の発表
上:横軸に地震発生時刻を追加したグラフ
上:震源では初期微動が観測されないことを示した板書
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上2枚:生徒2人の学習プリント
授業を終えて
この部分は入試に良く出るので、練習問題をやりたいと思います。なお、授業は次が最後です。関連ページ
・地震のゆれ方 1年(2002年)(地震計のしくみ)
・実習1 地震の伝わり方 1年(2002年)
・地震のゆれ 3年(2001年)
・初期微動継続時間 3年(2001年)
・実験9 縦波・横波 1年(物理学1999年)実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学』
第6章 プレートの
動きと地球地震計のしくみ p.117 地震のゆれ方 p.118 縦波と横波をつくろう p.119 初期微動継続時間を調べよう p.120、p.121
実習16 地震の大きさ、伝わり方 |
演習18 H25 愛知県立高校 入試問題 |