このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第90時
演習18 H25 愛知県立高校 入試問題

     2013 3 18(月)、19(火) 
     普通教室

はじめに
  2013年3月14日(木)に実施された、愛知県の公立高校(全日制課程B)入試問題に『地震』が出題されました(20問中4問、割り合い20%)。前時学習した地震波のグラフも出ていました。タイムリーな出来事なので、問題コピーし、解かせることにしました。制限時間は答え合わせを含めて10分。学習したばかりなので全問正解を期待しますが、1年生は長文で挫けるかも知れません。また、今回は最終授業なので、授業後半は1年を振り返るアンケートを行います。


上:入試問題を解説する生徒


本時の目標
 初期微動継続時間に関する問題練習をする
 愛知県の公立高校入試問題に触れる
 この1年間の理科の学習を振り返り、来年度への糧とする 

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • H25 愛知県立高校 入試問題のコピー(1/人)
  • 最終アンケート(1/人)

授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)
 前半は公立高校の入試問題、後半はアンケートを行います。

(2) 愛知県の公立高校の入試問題  (3分)
 愛知県の公立高校の入試システムをごく簡単に説明します。そして、先週木曜日に行われた全日制課程(普通科)Bの問題を解かせます。たった4問ですが、問題文は2ページあります。生徒は問題文の量に驚きますが、大切なのは問題の内容です。問題文の構造を紹介し、理科の問題であること、地震の問題であることをしっかり示しました。

(3) 演習:地震に関する入試問題を解く  (10分)
 本番は20問で40分です。今回は解答を合わせて10分としました。長い時間をかければ良いというものではありません。できた生徒から答え合わせをしますが、正解は問題の裏側に印刷してあります。


上:集中して問題に取り組む生徒

(4) 正解率の調査、私からの追加説明  (3分)
 クラスによって大きなばらつきが出ました。1年生はもともと偏りがあるからです。さらに、私のミスで海嶺を指導していないことも発覚しました。これはいけません。さっそく追加説明しました。さて、正解率は平均40%でした。もう少しあるかな、と期待したのですが、長くて読みにくい問題文に負けた生徒がたくさんいたようです。

(5) 生徒による問題解説  (7分)
 解説するつもりはなかったのですが、生徒の要望が高かったので実施しました。どのクラスも明解に解説する生徒が育っていたことに、この1年の成果を感じました。代表生徒による問題解説で、大多数の生徒は理解できたようです。2年後の入試問題に出題されると良いですね。


上:生徒による問題解説 (グラフの軸は私が書いておきました)

(6) アンケート調査  (7分)
 最終授業のアンケートは、記名式で行いました。結果は、後輩の授業に生かされること、通知表に反映しないことを知らせました。これでお別れになる生徒もいるので、記入してもらいながら私自身について雑談を交えました。


上:教室でアンケートを書く生徒達


上:理科室でアンケートを書く生徒達


最終アンケートの結果と分析

日時:2012年3月の最終授業
場所:各教室
対象:私が今年度担当した1年生(3クラス)
項目:以下の6項目
(1)理科は好きになりましたか?
 4月当初と今を、それぞれ5段階で自己評価
(2)(1)のように変化したのはどうして?
 記述式の自己分析
(3)この1年間の思い出の授業を3つぐらい
 記述式
(4)理科って何?
(5)自然って何?
(6)ヒトは自然ですか?
 Yes・No・どちらともいえない、から1つ選択
(7)(7)の理由
(8)福地先生へのメッセージ

結果と分析:上記項目(1)〜(3)

アンケート1:理科は好きになりましたか?
 理科は好きか、4月当初(小学校の時)と今を比較させました。3クラスを男女別に集計しましたが、男女差があったので、合計の他に男女別も示します。また、クラスによる偏りもありましたが、ここには掲載していません。

アンケート1の結果
女  4月当初
小学校の時
合 計 合 計  男
5 4  大好き 9 24 大好き 19 5
16 9  好 き 25 35 好 き 18 17
17 21  普 通 38 22 普 通 6 16
8 7  嫌 い 15 12 嫌 い 6 6
4 3  大嫌い 7 1 大嫌い 1 0

 結果を分析すると、全体として好きになりました。男女別にみると、男子がより好きになったことがわかります。上表では分かりませんが、クラスでも差がありました。

アンケート2:上のように変化したのはどうして?
 自分の気持が変化した理由を、ごく簡単に記述させました。以下は、変化した段階ごとに整理したものです。1人の生徒でたくさん理由を書いたものは、それぞれ別項目にしてまとめました。理由末尾にある『1』は、その理由を書いた生徒数を示します。『111』は3人、『11』は2人、何もない場合は1人です。

4段階
UP
・実験が楽しかったから   
3段階
UP
・授業が楽しかったから
・実験がたくさんあったから
2段階
UP
・授業が楽しかったから 11111
 (授業で笑えたから)
・授業がわかりやすかったから 1111
・実験が増えたから 1111
・公園や校庭で花や岩石を採集、標本づくりできたから 111
・福地先生が楽しいから 11
・福地先生の教え方が上手いから 
・実験の説明が堅苦しくないから
・実験が楽しかったから
・危険なときがあるから 
・小学校より詳しく教えてくれたから
・物理と化学が増えたから
・小学校は覚えるだけで、テストでわからなかったから 
・テストで50点以上とれるようになったから
・地学になってから、そこまで嫌いでなくなったから
1段階
UP
・授業が楽しかったから 11111111111111
・実験が楽しかったから 1111111111
・実験が増えたから 11111111
・福地先生が楽しいから 11111
・授業がわかりやすかったから  11111
・公園や校庭で実習できたから、楽しかったから 111
・実験できるから  11 
難しい実験をするようになったから 11
実習しているうちに好きになったから
実験をして自分で見て考えるようになったから
・小学校より深い内容になったから
理科の面白さがわかったから
・実験で内容がわかりやすいから
・問題の解き方を詳しく教えてくれたから
・語句をチェックして黒板にまとめる授業ではないから
・重要語句を覚えることができたから
・テストの点や内申が上がったから
・得意な単元ができたから
・テストの点が取れなかったので1段階UPまで
変化なし ・小学校の頃からずっと好きだから  (大好き111111)(好き1)
・実験が面白から (好き)
・植物は得意だけど、密度や実験が苦手だから (普通)
・私の嫌いな実験が多かったから (嫌い)
・興味がなかった石や火山が面白くなったから (大好き)
1段階
DOWN
・小学校より難しくなったから 1111
・計算問題が多いから 111
・テストが難しいから 111
・小学校より暗記が多くなったから
・小学校は暗記だけで、実験しなくて良かったから
・テストがどの教科より難しく、暗記することが多いから
・時々、授業が難しいから
・わけがわからなかったから
・3学期に実験がなくなったから
・冬の理科室が寒いから
・小学校は遊びのような実験だったけど、中学校は石や地震など難しくて覚えられなかったから
・だんだん難しくなって、テストで良い点が取れなくなったから
・実験の方が好きだから
2段階
DOWN
・いろいろな単語が出てきてついていけないから
・テストの点が下がったから
3段階
DOWN
・覚えることが多くなったから
・計算が難しくなったから
・濃度計算が難しいから

 結果を分析すると、好きになった1番の理由は、授業が楽しかったことです。楽しかった理由は、(1)実験が増えたこと、(2)授業内容がわかりやすかったこと、(3)私のパフォーマンスを楽しんでくれたことです。実験の大切さや理科の奥深さを記述した生徒の言葉は、「難しい実験をするようになった(2人)」「実習しているうちに好きになった」「実験をして自分で見て考えるようになった」「小学校より深い内容になった」「理科の面白さがわかった」でした。また、特徴的なものは『校庭や公園での実習(6人)』でしたが、これはアンケート3の思い出に残る授業『瑞穂公園での植物(33人、全体の33%)』『校庭での岩石採集(30人)』という結果になっています。

 逆に、嫌いになった1番の理由は、小学校より難しくなったことです。計算問題が増えたこと、テスト問題そのものが難しいこと、暗記内容が増えたことです。この問題を簡単に改善する方法は、テスト問題作成時に、その内容を簡単にして平均点をあげることです。私1人で全クラスを担当できるなら、授業内容とテスト内容を完全リンクできますが、今年度のように3人で担当しなければならない時は限界があります。一般的な問題が中心になり、どれだけ授業を楽しんだか、どれだけ内容を深く追求したかを調べる問題を作れないからです。一般的な問題の平均点を下げるいう消極的な方法は、残念な話ですが、テストの得点に敏感になっている生徒を救済する唯一の方法かも知れません。

アンケート3:この1年間の思い出の授業を3つぐらい
 ほぼ全員の生徒が思い出の授業を3つ挙げました。思い出せない生徒に対して、学習プリンをぱらぱらめくるように指示しました。下表は、単純合計した得票数を、授業順に並んだ授業記録の後に示したものです。ある授業を特定できないものは、単元末尾に得票数を示しました。また、授業記録はそれぞれのページにリンクしています。

分 野
時数 授業タイトル     得票数

生物学

54票

肉眼、ルーペによる観察
01 サクラの花の分解   1111111
02 タンポポ       111
09 瑞穂公園で野草    111111111111111111111111111111111
00 花          1
00 植物の標本づくり   1
顕微鏡による観察
13 いろいろな植物細胞  1
実物観察 + イメージ
17 野草のデンプン    1
植物分類
23 植物の分類      11(被子植物と裸子植物)

00 植 物        1111

化 学
84票

固体の密度、金属、有機物など
25 密 度        1
29 マッチ、ガスバーナー 11111111111(火を触る4、何秒1)
30 いろいろな物質の加熱 1111
31 有機物の燃焼     11111111(プラスチック1)
32 金属(メタル)    1111
気体(分子、純物質)
34 酸素をつくる     111
35 ニ酸化炭素をつくる  11
36 水素の爆発      111111
37 アンモニアの噴水   11111111111111
00 気体の実験      1111
状態変化
40 エタノールの沸点   111(燃焼1)
41 パラフィンの状態変化 11
42 パルミチン酸の変化  1 
43 酒の蒸留       111111
00 沸点や融点のグラフが大変だったこと
水溶液
44 こげた砂糖の拡散   11111111(エントロピー)
00 水溶液        11

00 化学実験       1

物理学
65票

49 セロファンで色    111111
50 (鏡による)光の屈折 1 
53 凸レンズで紙を焼く  1
56 実像と虚像の実験   1
00 光          1111(屈折1)
00 光の実験       111

57 糸電話        1111111111111111
58 ストローの笛     111111111(オシロスコープ1)
00 音          1
静力学
62 輪ゴムで質量を量る  1
67 水の圧力       11
68 浮力の大きさ     1
70 缶つぶし       111111111111111
00 圧力(面積)     11

地 学
69票
導入、マグマ→鉱物(火山噴出物)→火成岩
73 地球の歴史      11111(S君が地球を作った2)
74 地球の内部構造    1
75 火山噴出物      1
76 マグマで決まる火山  1
78 鉱物         1
79 運動場から鉱物    11
00 岩石のスケッチ    1111
00 火山         111
00 火成岩        1
風化・侵食→地層→堆積岩、化石
81 水底で生まれる地層  111111111
83 地層の広がり(柱状図)1
84 石灰岩と塩酸で二酸化炭素 1
85 化石         11
86 校内の岩石採集    111111111111111111111111111111
地震(大→小)
87 地殻変動       11
88 地震の色塗り     1
00 地震         1111

その他
90 最終授業


00 テスト返却      11(2学期中間テスト)
00 先生のだじゃれ、キャラ11
00 先生の印集め     1
00 すべての授業     1
00 計算問題をやった授業 1
00 夏の自由研究(S君) 1

アンケート『思い出の授業』の結果分析
 今年度は、生物学→化学→物理学→地学の順に実践しました。昔のことは記憶が薄くなり、最近ことはよく覚えているので、それを考慮する必要がありますが、全分野・全単元に票が入りました。どの分野・単元も気を抜くことがきないと改めて思いました。次に、分野毎の分析を行います。

生物学(54票):植物 

(1)1時間目のサクラの花の分解は初頭効果もあり、高い人気を示しましした。知名度が高いサクラを使った授業だったことも良かったかも知れません。近年、サクラの開花時期が早くなってきていますが、サクラにこだわることは大切かも知れません。雌しべ、雄しべ、花弁、がくの大きさも適切です。2時間目のタンポポも3票入りました。
(2)瑞穂公園での野草採集は、最高得票数を得ました(33票、33%)。校外に出て授業を行ったことも大きな要因ですが、自分の学習プリントに植物標本がきれいにでき、それが残されていることも見逃すべきではありません。植物の標本づくりそのものにも1票入りました。
(3)植物分野は、肉眼レベルから顕微鏡レベルへ、実物からイメージへと展開しました。得票数をみると、明らかに肉眼レベルに人気があります。中学1年生にとって、顕微鏡観察やイメージによる学習はまだ早いのかも知れません。生徒の発達段階を考慮すべきだと思います。先生は頭でっかちになりやすいので、注意しなければいけません。中学1年生はまだ子どもです。
(4)顕微鏡観察(植物細胞)は1票だけでした。他の分野・単元でも何回か顕微鏡を使いましたがゼロでした。残念な結果ですが、受け入れるしかありません。授業時間を増やしていただければ、生徒にもっと楽しんでいただけると思います。
(5)植物の分類に2票入ったことは意外でした。植物の多様性に気づき、ある基準で分類することは面白いことです。

化 学(84票):固体の密度、金属、有機物など、気体、状態変化、水溶液

(1)化学分野の内容はばらばらでしたが、1番人気の分野でした。
(2)マッチ、ガスバーナーは非常に大切な1時間だったことがわかりました。最近はオール家電で火を見た経験が少なくなっています。ますます理科の授業でマッチを擦り、ガスバーナーを点火し、火を触る経験が大切になってきていると思います。
(3)2つの加熱実験いろいろな物質の加熱有機物の燃焼はいずれも高い人気でした。
(4)金属(メタル)に4票入りました。標本づくりをしたことが原因だと思います。植物標本、岩石標本も高い人気を示しています。セロハンテープを使った授業は非常に有効であることが検証されました。興味ある方は、別ページ『自然をセロテープで貼る若手教師のためのワンポイント・レッスン』をどうぞ!
(5)気体の実験授業は、すべて高い人気でした。アンモニアの噴水14票、水素の爆発6票、酸素3票、ニ酸化炭素2票です。それぞれ1時間ずつ確保したことも人気の要因だと思います。
(6)状態変化は全体で12票入りました。私の予想より善戦しました。とくに、酒の蒸留エタノールの燃焼は人気でした。
(7)水溶液の授業こげた砂糖の拡散は8票入りました。驚きの票数です。私が開発したこの授業は、世界標準に相応しいものだと確信しました。

物理学(65票):光、音、静力学 

(1)色の3原色の学習で行ったセロファンで色を作った経験は欠かせないものであることがわかりました(6票)。
(2)光は、全体で16票です。平均的な数ですが、全般的に興味を持ったようです。
(3)音は、糸電話ストローの笛のたった2時間でしたが、いずれも高い人気を誇りました。光を完全に抜いています。もっと時間を使わなければいけないと痛感しました。現行の学習指導要領による時間(配分)では不可能なので、迅速な改善を要求します。
(4)缶つぶしに15票入りました。理論がわかっていのか不明ですが、これだけ思い出になっているなら、その価値は十分です。

地 学(69票)マグマ、鉱物、火山、火成岩地層、堆積岩、化石地震

(1)地球の歴史に5票入りました。そのうち2票は、授業で「地球誕生はビックバンではなく、S君がつくった」とS君本人が新説を唱えたことです。なんだ、と思うかも知れませんが、このタイミングまで覚えていることは重要なことだと思います。
(2)岩石のスケッチに4票、火山に3票あります。最近の授業でよく覚えていることも手伝っていると思いますが、岩石や火山に興味を持ってくれて私は嬉しいです。
(3)水底で生まれる地層(8票)は大掛りな演示実験でした。大変でしたが、思い出になってくれて光栄です。
(4)校内の岩石採集は全授業中第2位です。お散歩が楽しかったのかも知れませんが、これまで石にしか見えなかったものが、名前をもった岩石になった喜びもあると思います。
(5)地震は合計7票でした。最新の授業でしたが、その割には人気がありませんでした。


授業を終えて
 前半の入試問題の内容は難しくありませんが、問題のツラと文字量に負けたようでした。入試のための特殊訓練をしなければ、理科の力を発揮できないことがわかりました。これは以前から分かっていたことですが、中学1年生に解かせることで、より明確にわかりました。

 後半のアンケートでわかったことは、理科の授業は教室で行うものではない、ということです。理科室でもダメです。理科は屋外で学習するものです。理科の対象は自然なので、室内で学習できることは限られています。本物の自然があるなら、そこで学習すべきです。とくに最近の子どもは自然体験が少なく、イメージできるものが限らています

 また、理科室で得た力を屋外の自然で試す必要があります。アンケートのダントツ2つ野草採集岩石採集は、いずれも屋外で実物採集・標本づくりをするものです。理科の力は、紙による定期テストではわかりません。本物の自然界における自然物の採集・標本づくり、自然の事象の観測や実験レポートで決めたいものです。

 くり返しますが、理科室で学習できることは限られています。もちろん、中学2年、3年と進めば別ですが、それでも最近の日本の現状を考えれば、子どもにとって本当に必要なものは本物の自然です。わざわざ屋外へ出かけること、屋外で授業をすることは、これからの理科教育の標準になるでしょう。そして、理科の先生にはより多くの指導力が求めれる時代になると思います。

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実習17 地震の揺れ方(初期微動継続時間)

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(C) 2013 Fukuchi Takahiro