このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2013年度)です

第15時
観察15 オオカナダモの細胞(葉緑体)

     2013 6
     理科室

はじめに
 本時と次時は、顕微鏡で植物細胞を観察します。手始めの今日は、植物細胞の基本構造を紹介しますが、詳しいつくりは2年生で学習することになっているので「核」「葉緑体」「ミトコンドリア」「リボソーム」の4つに止めます。とはいっても、ミトコンドリアとリボソームは高校生物で学習する内容です。本来教えなくてもよいこと扱うのは、生物の面白さを味わってもらうためです。私の学習の基本姿勢は楽しむことですからね。

 さて、4つの細胞小器官を紹介してから、オオカナダモの葉のプレパラートづくりをさせます。本時のもっとも大きな目標は、全員が美しいプレパラートをつくれるようになることです。これは生徒の目標であると同時に私の目標です。つまり、全員Aです。通知表の評価が全員Aになったとしても、それは仕方ないことです。気泡が入っていない美しいプレパラートをつくる実験技能は難しいものであり、美しいプレパラートさえできれば、誰でも葉緑体を観察することができますからね。


上:特別なピンセットや柄付き針を使わずに美しいプレパラートをつくる生徒


本時の目標
 植物の細胞小器官(核、葉緑体、ミトコンドリア、リボソーム)を知る
 オオカナダモの美しい一時プレパラートをつくる
 オオカナダモの葉緑体を観察、スケッチする
 → 原形質流動を観察する
 核を酢酸オルセインで染色し、観察スケッチする

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • テッシュペーパー
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 顕微鏡 (1/人)
  • スライドガラス (1/人)
  • カバーガラス (1/人)
  • 光源 (1/班)
  • オオカナダモ (1/班)
  • 100mlビーカー (1/班)
  • 酢酸オルセイン

1 植物の細胞小器官(核、葉緑体、ミトコンドリア、リボソーム)を知る
 5分程度で、さらっと紹介しました。まっ先に観察できるものは「葉緑体」です。細胞膜と細胞壁はほぼ完全に癒着、区別できないので、今回は紹介しませんでした。細胞の中心となる「核」は、染色しなければ見えないので2番目に紹介しました。その他、中学2年生で「液胞」を学習しますが、観察することはほぼ不可能です。どうせ不可能なものなら、呼吸器官「ミトコンドリア」と物質合成器官「リボソーム」を取り上げるべきです。これら2つは、全ての生物がもっている細胞小器官、生命活動の中心だからです。


上:植物の細胞小器官(核、葉緑体、ミトコンドリア、リボソーム)の板書

2 オオカナダモの美しい一時プレパラートをつくる
 私のプレパラートづくりの演示操作は3分程度です。器用な生徒は、私と同じようにわずか3分で美しいプレパラートをつくり、私のところへ持ってきます。スライドガラスとカラーガラスの間が均等な必要最小限の水で満たされ、気泡がない場合は合格です。学習プリントの右端上に印刷しておいた点検コーナーに「A」を記します。Aをもらった生徒は、光学顕微鏡で観察しますが、合格したプレパラートを使えば95%以上の確率で美しい葉緑体が観察できます。


上:今年の実験に利用した小さなオオカナダモ
(これは昨年の実験で使ったオオカナダモの残りものです。水槽に放置しておいたので、冬に全滅したように思いましたが、ここ1ヶ月ほどで成長してきました。毎年業者から購入するのですが、今年は無料です。6クラス198人分を確保できるか心配でしたが、上の写真に写っている葉をかぞえれば、意外にたくさんあることがわかります。1ケ所から4枚ずつ葉が出ています。)


上:テレビに投影されたオオカナダモの細胞
(ピントが悪くて失礼しています。これは言い訳ですが、オオカナダモは細胞がたくさん重なっているので植物細胞の観察には適していません。「原形質流動による葉緑体の動き」は面白いと思いますが、それを中学1年生に説明するのはかなり困難です。わー、面白い! だけではダメです。しくみや原因がある程度理解できなければ、結果としてつまらないことになります。)

3 オオカナダモの葉緑体を観察、スケッチする


上:自分が観察したものをスケッチする生徒
(顕微鏡の視野、丸い外枠を書く必要はありません。また、たくさんの細胞を書くより、1つの細胞を詳しく書いた方が優れています。ただし、このことは私が指導していなかったのでので、ご免なさい。上のスケッチは、葉緑体がまばらに分布している様子がかけています。)


上:Aさんの学習プリント

4 酢酸オルセインで核を染色し、核を観察、スケッチする
 植物は細胞壁をもっているので、細胞内の核の染色は困難です。この問題を解決する方はいくつかありますが、もっとも簡単な方法を知りたい方は、別ページ『オオカナダモの細胞の核を観察する方法』をご覧ください。


上:1ml駒込ピペットで、生徒1人ひとりのプレパラートを染色する私



上:40倍の対物レンズを使って観察する生徒


上:酢酸オルセインで赤く染まったオオカナダモの核


上:染色液が細胞内へ浸透していないものの、無色透明の核が観察できるオオカナダモ


上:後片付けのひとこま


上:Bさんの学習プリント


授業を終えて
 プレパラートづくりは全員Aだったと思います。また、昨年度もそうでしたが、今日は静寂の時がたくさん流れていました。次時は、自宅から持参した植物(野菜や果物、あるいは、道端の野草)を使ってプレパラートをつくり、植物の表皮にある気孔を観察、スケッチします。お楽しみに!

関連ページ
 観察8 葉緑体のはたらき(光合成) 1年(2002年)
・ 観察15 オオカナダモの細胞(葉緑体 1年(2013年)
 実験1.1 オオカナダモの葉緑体(光合成) 1年(2002年)
 観察9 葉緑体(オオカナダモ) 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第2章 細胞の構造とはたらき   動物細胞と植物細胞の比較
 核は生物の設計図
 リボソームは有機物を合成する
 核とリボソームがつくる物質
 ブドウ糖をつくる葉緑体(光合成) 
 植物の2つの同化作用
 代謝(異化と同化)のまとめ
 p.24 
 p.25
 p.25
 p.26
 p.32
 p.33
 p.38

第14時 ←
考察14 1年理科1学期中間テスト

→ 第16時
観察16 いろいろな植物の気孔

↑ TOP

[→home
(C) 2013 Fukuchi Takahiro