このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 3年(2018年度)です |
第37時
観察5 動物のふえ方2018 7 18(火)、19(水)、9/4(火)
普通教室はじめに
動物にはいろいろな種類があり、ふえ方もさまざまです。本時はカエル(両生類)を扱うだけですが、できるだけ詳しく学習することで、動物の『発生』の不思議さを感じるだけでなく、他の動物を自学自習したときに解決できる力を育てたいと思います。また、保健体育でヒトの妊娠・出産について学習していると思いますので、関連の先生と情報交換してください。
関連ページ
2001年度(3年)観察6 動物のふえ方、観察7 卵割、胚の発生
2004年度(3年)観察7 アフメリツメガエルの一生
2000年度(3年)観察1アフリカツメガエル
上: A組での板書
本時の目標
・カエルの有性生殖、発生(卵割、細胞分裂)、孵化、成長(変態)についてスケッチしながら調べる
準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)(2)メスとオスがある理由(5分〜10分)
最近、『性同一障害(GID、肉体的な性と精神的な性の不一致)』や『トランスジェンダー(ジェンダー:性)』がよく話題になります。よくわからない人も多いと思いますが、私もよくわかりません。この問題は『ヒトの肉体と精神に関すること』ですが、精神はもとより、肉体の性の違いを定義することは専門家にとっても困難です。性染色体(x、y)の識別はできても、それだけでは不十分です。まして、すべての動物(生物)を対象にした『雌雄の定義』は至難の技です。今日の授業冒頭の質問はそれにつながるものです。何が飛び出すか大変ワクワクする授業になりますが、最近デリケートになっている問題を含むので慎重に扱います。
「今日の授業は、まず、オスメスじゃなくて、(♀と♂を板書して)これとこれ、なんですが・・・(♀を指差して)これの読み方わかりますか? ・・・え、逆のヒトがいる! オスですか、メスですか、どっち? ・・・そうですね。メスです。読み方を知らない人がいるので、振り仮名をつけておいてください。で、こっちはオスです」
「ということで、メスとオスがある理由について説明できる人はいますか?・・・はい、A君・・・(後略)・・・」
上記2つめ「性行為をするため」については、「性行為の目的や理由は何か、もう一歩踏み込んでみましょう」と指摘しておきました。
(3)メスと何か、オスとは何か(5分〜10分)
子どもたちの中にトランスジェッダーがいることを前提にして、慎重に授業を展開します。子どもたちの意見をもとに、時間が許す限り考察します。不適切な発言があれば、厳格に指導します。もし、子どもたちが行き詰まっているようなら、次のようにカマキリの話をしましょう。
「ねえ、カマキリのメスとオスの話を知っている人はいませんか? メスがオスを食べるって話!」
代表生徒に説明させた後、なぜ、オスはメスに食べらえてしまうのか、考えさせてください。メスやオスの気持ちを考える、という方法もありますが、カマキリとヒトは違います。深追いしないようにしてくださいね。
(4)カエルの発生(25分〜35分)
繁殖期のカエルは、産卵&受精のために『交接』します。オスがメスの上に乗り、後脚でメスの腹部を刺激します。産卵と同時に精子を放出することで、受精が完了します。受精は体外なので、交尾ではなく『交接』というのです。この話を聞いて興奮がさめない男子がいたら、彼の方を見ながら、発情したオスのカエルの話をしてあげてください。
「発情したオスの話をします。発情したオスの前に『木片』を投げてやると、どうなると思いますか? オスはメスと間違えて抱きつきます。前脚でがばっと捉え、後脚でごしごしこすり始めます。一旦始まるとどんどん興奮して、死ぬまでこすり続けます。A君、興奮しても良いですが、状況をよく判断して、途中でやめないと発情した雄ガエルになってしまいます」
上図のように矢印を書き、その間に『発生』の各段階を書き入れていきます。
カエルの発生
1)卵子&精子
↓ 受精
2)受精卵
↓ 細胞分裂(卵割)
3)2細胞期
↓ 細胞分裂(卵割)
4)4細胞期
↓ 細胞分裂(卵割)
5)8細胞期
↓ 細胞分裂(卵割)
6)16細胞期
↓ 細胞分裂(卵割)をくりかえす
7)胞胚期(同じ細胞が表面に並ぶ)
↓ 細胞分裂を繰り返す(ここからは『卵割』といわない)
8)のう胚期(細胞が分化し、将来『肛門』になる原口ができる)
↓
9)原腸胚(1本の消化管ができる)
↓
10)神経胚(脊髄ができる)
↓
11)尾芽胚(孵化の準備が完了する)
↓ 孵化
10)オタマジャクシ(子)
↓ 自分で栄養をとる
↓ 変態
11)カエル(親:生殖細胞をつくることができる)
メスは卵巣で卵、オスは精巣で精子をつくる
生徒の興味関心に合わせて解説を進めます。ただし、カエルやオタマジャクシが身近な存在でなくなってしまった今、子どもたちの目はあまり輝きません。いつも見ている生物なら、「おっ、そうやって見るんだ」「大発見、新発見」として喜べると思いますが、珍しい生物に調べても「へー」です。
ヒトの妊娠、発生と関連付けることで、学習意欲を高めてください。以下はC組での板書です。
卵割と細胞分裂の違い
(1)受精卵の細胞分裂を『卵割』という場合がある
(2)卵割は、分裂するたびに細胞の大きさが小さくなる
(3)卵割でできた細胞は、どれも同じはたらきをもつ(胞胚期まで)
(4)『のう胚期』から細胞分化が始まるので、卵割とは言わない
(5)『のう胚期』からの細胞分裂に、特別な名称はない発生という言葉
(1)受精卵から子になるまでを『発生』という
(2)植物に対して、発生という言葉は使わない体細胞分裂・卵割・減数分裂について
別ページ『観察7 卵割』参照
(5)本時の感想、考察 (5分)
授業を終えて
一番の問題点は、オタマジャクシが身近な生物ではなくなっていることです。名古屋市中心部には、水田やカエルが生息できる公園や自然がありません。私が幼いころは、何とか見つけることができましたが、最近は皆無です。カエルはお金で買う時代になり、オタマジャクシは貴重品にようになってしまいました。本物のオタマジャクシを見せれば、おそらく「かわいい」と言ってくれると思うのですが、実際は親ガエルを見て泣き叫ぶ子どももいます(観察7アフメリツメガエルの一生2004年度(3年))。もし、実習計画をされているなら、アフリカツメガエルかメダカをおすすめします。ツメガエルは高額ですが、飼育環境を整えれば簡単に産卵します。私が購入した時は翌日産卵していて、しらばくすると、オタマジャクシなりました。とても驚きました。(観察1アフリカツメガエル2000年度(3年))。肉眼で観察できますが、双眼実体顕微鏡を使えば大変有意義な時間になると思います。
メダカも条件を整えれば、年中産卵させることができます。無精卵は発生しませんが、有精卵を採取できたなら顕微鏡で観察してください。卵の数が少なければ、教示用顕微鏡でモニターに映しても良いでしょう。心臓の拍動、血管を流れる血液を見ることで、生命の神秘に触れ、生命を大切にしようとする心を育てることができると思います(授業実践記録を残したいなあ)。
関連ページ
2001年度(3年)観察6 動物のふえ方、観察7 卵割、胚の発生
2004年度(3年)観察7アフメリツメガエルの一生
2000年度(3年)観察1アフリカツメガエル実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』
第6章
生命の連続性有性生殖と受精 p.112-p.113 受精卵が子になるまでの卵割 p.114-p.115
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観察4.2 胚・種子・果実
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観察6 ABO式血液型↑ TOP
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