このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2013年度)です

第8時
観察8:いろいろな植物の維管束

     2013 5 
     第1理科室 ←→ 屋外

はじめに
 前時は肉眼レベルで「葉脈と根のつくり」、本時は同じレベルで「維管束(動管と師管が束になったもの)」、次時は顕微鏡レベルで「単子葉植物と双子葉植物の維管束」を調べます。さて、本時の焦点は「維管束」です。維管束は、植物のからだじゅうに水や養分を運ぶ管の集まりですが、動物にも同じような管があります。ヒトは、血管とリンパ管をもっています。また、維管束の発達を調べるために「葉脈」を調べます。平行脈から網状脈へ発達したことは感覚的に推測できますが、本時は2つの葉脈をスケッチする時のポイントを押さえることで、発達した内容を明確にします。

note:維管束植物、陸上植物
 維管束をもつ被子植物、裸子植物、シダ植物を「維管束植物」としてまとめることができる。同じように、陸上に生活するコケ植物を合わせて「陸上植物」とすることもある。これらは、植物を分類する方法の1つなので、水中生活する藻類の学習後に紹介しても悪くないだろう。植物は動物と同じように、水中から陸上へ生活範囲を広げるようとして、「管」を発達させたきた歴史がある。


上:A君の学習プリント

本時の内容
前半(15分):植物と動物のからだをめぐる管

1 維管束植物とヒトは同じように、からだじゅうをめぐる管があることに気づく
2 植物の維管束(動管と師管)をまとめる
後半(35分):葉脈(維管束)の発達

1 平行脈と網状脈を正しくスケッチする
2 二又脈(イチョウ)→ 平行脈→ 網状脈、をまとめる
3 校庭で3つの葉脈を採集し、学習プリントにまとめる
 ※ 二又脈の構造は説明するが、二又脈という語句は教えない
 ※ 開放系(イチョウ)→ 閉鎖系(平行脈、網状脈)

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • セロハンテープ
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ(1/人)
  • 校庭の植物、イチョウ


前半:植物と動物のからだをめぐる管
 植物の維管束をまとめるだけでは簡単過ぎるので、ヒトの血管とリンパ管を紹介しました。植物の動管(水)と師管(養分)を深追いするより、ヒトの血管に流れているものを考えさせる方が遥かに楽しい授業になります。「ヒトの血管に流れているもの何ですか? 赤血球、白血球などではなく、体じゅうが直接必要としているものです」と発問してみましょう。「酸素」や「栄養分」はすぐに発表されますが、最も重要なものは簡単には出てきません。「ヒトの場合、養分はなくても1ヶ月近く生き延びることもありますが、それがないと3日で死にます」 その答えは、「水」です。血管を使って運搬しているもは、水を栄養であり、植物と同じです。ヒトの血管は水と養分を運搬するための管であることに気づいた時、植物の維管束(動管と師管の集まり)を身近なもの、非常に大切なものとして認識できるようになります。


上:植物とヒトのからだじゅうをめぐる管をまとめた板書

 授業前半「植物と動物のからだをめぐる管」の最後に「葉脈」を指摘させ、授業後半「葉脈の発達」へつなげます。葉脈は、植物の葉にある維管束です。

動物と植物のからだをめぐる管2012年度の実践から)
 「(ヒトをごく簡単に板書し、それに赤チョークで血管らしきものを描き加えてから)さて、ヒトの身体にある繋がった管を何と言いますか? ・・・その通りです。血管です。で、実は植物のからだにも同じような管がはり巡らされているのですが、その名前を予習してきた人はいますか? 塾で習った人もいるかも知れないけれど・・・はい、その通り。維管束です。これは重要語句で、次のテストに出題される可能性がとても高いので漢字で書いてください。自分のプリントに漢字で書けた人は黒板に書きに来てください。先着1名です。」

写真:維管束を板書する生徒

後半:葉脈の発達
 葉脈の発達に関する指導方法は2012年度の記録に(4)維管束の発達、(5)平行脈と網状脈の模式図を描く、(6)開放系から閉鎖系へ、としてまとめてあります。興味ある方はご覧ください。


上:3つの段階に分けた葉脈の発達(左)、生徒5人が考えた平行脈の模式図(右)


上:閉鎖系としての正しい平行脈の模式図(左中央)、完全な間違いとしての平行脈と生徒5人が考えた平行脈の模式図(右)


上:葉脈の発達(左)、生徒4人が考えた網状脈の模式図(右)

 さて、葉脈の発達を3段階に分けたら、それぞれの実物を採集・標本づくりをさせます。採集時間は5分もあれば十分ですが、それを添付したり気づいたことをまとめたりするために10分確保しましょう。


上:イチョウの葉を選ぶ生徒達(掲載許可取得中)


上:Cさんが私に見せてくれた3つの葉


上:感想を書く生徒


上:添付した平行脈をルーペで観察する生徒

左:実物投影器でテレビ画面に写したイチョウの二又脈
右:D組での板書


上:E君の学習プリント


上:F君の学習プリント(サクラは平行脈がよくわかります)


上:Gさんの学習プリント


授業を終えて
 「先生、網状脈の葉は周辺がぎざきざになっている」と教えてくれたFさんに驚きました。Hさんの高い確率で当たっている発見(事実)を記述している文献を私は知りません。言われてみれば簡単なことですが、明確に指摘することはとても重要です。そして、このような発見があるからこそ生徒実習はやめられません。

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左:黒板上部に手が届かない友達を抱きかかえて助ける生徒(掲載許可取得中)
右:それを反省して、小さな葉っぱを用意した私


上:主役の子ども達がいなくなった理科室

関連ページ
・ 観察5 根と葉脈と子葉 1年(2002年)
・ 観察10 葉脈と根のつくり 1年(1999年)
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第1章 生命とは何か   観察の基礎  p.20
第5章 花と植物   植物の分類  p.100
第8章 進化と分類   雑草で調べる葉脈と根の関係  p.144〜p.145

第7時 ←
観察7 野草で調べる葉脈と根の関係

→ 第9時
観察9 維管束の顕微鏡観察

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