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中学校理科
3年間のスケジュール案

 3年間のスケジュールを表1のように提案します。とくに、1番初めの授業は植物学入門が良いでしょう。春の野草が新入生を迎えているからだけでなく、科学を体系的に学習できるからです。今後、日本の入学式が春でなくなってしまう悲劇が起こっても、植物分野は新入生へ知的感動を与えてくれるでしょう。そのための具体的な手段は植物学入門をご覧下さい。

 しかし、すべての学校が植物分野から始め、同じスケジュールで授業を進める必要はありません。みなさんの中学校を取り巻く自然環境に合わせて再編して下さい。とくに検討が必要な分野は、生物学(動・植物)、地球科学(岩石、気象)、天文学です。自然環境に恵まれた学校は、多くの時間をこれらの分野に使って下さい。ただし、興味関心を引き出すだけの学習に終わってはいけせん。あくまで系統性を持った学問の入り口に立つためのスケジュール作りであること、を忘れないように。1つの事象を掘り下げることには賛成しますが、そこから他の分野につながるカリキュラム作りを心掛けて下さい。それが義務教育としての理科の使命であり、1人の教師が理科のすべての分野を受け持つ理由だからです。

 また、先生の得意な専門分野に時間が費やされても、それが他の分野につながるなら私は大賛成です。ここで重要なのは学習が発展することではありません。さまざまな自然の事象が関連性をもってつながっていくことです。有機的にからみ合っていくことです。専門家だけが理解できる内容ではなく、一般社会人として必要な、あるいは、人間として誰もが自然から感じ取ることができる感覚を研ぎすますことが目的です。もしかしたら、中学生は自然に感動する心を取り戻す最後のチャンスかも知れないのです。

 なお、物理学と化学は実験室で学習するものが多いので表1のスケジュールに準じれば良いと思いますが、生徒の学力や実態によって変更することもあるでしょう。

表1 中学校3年間のスケジュール案

物理学 化 学 生物学 地 学 天文学
1年 植物学入門(20)
状態変化(11)
水溶液(8)
岩石と鉱物、地震(21)
光、音(15)
2年 化学変化(14)
物質と化学式(8)
人体・動物
生態系
(26)
力、運動、圧力(18)
気象学入門(20)
3年 電気分解とイオン、中和(14)
細胞分裂、遺伝(17)
電流と磁界、熱(23)
初等天文学(19)


 次に、3年間のスケジュールを再編成するための注意点を教科毎に示しますが、新任教師の方は、これらを参考にしながら表1のスケジュールの通りに授業を進めて下さい。この案を信じて、その日のその1時間だけに集中して下さい。準備を始めると、すぐに大量の予備実験や予習の必要性に気づくでしょう。しかし、新しい知識や視点を得ようと好奇心を持ち続けれることができれば、どんな努力も楽しみに変わります。そして何より先生自身が生徒よりも感動しなければ、何も伝えることはできません。頑張って下さい。

物理学


 1年生で光、音、2年生で力、運動、圧力、3年生で電流と磁界、熱を学習することをお勧めします。なぜなら、一般的な公立中学校に入学する生徒の5〜20%はひと桁の四則計算が十分にできないので、1年生で運動、圧力電流と磁界、熱で学習することは困難を極めます。基礎学力指導の先生や数学の先生と協力しあって、ひと桁の分数計算ができるようになることを優先させましょう。もちろん、理科の授業は数学ができなくても楽しめるように工夫しなければなりませんが、中学校を卒業するまでに単位の概念国際単位系(SIを大雑把に掴まえさせる必要があります。それが自然事象を統一して捉えようとする物理学の至上命題です。また、立体的な思考を必要とする電流と磁界は3年が適切でしょう。

執筆中

化 学


 1年生または2年生で状態変化、2年生で化学変化物質と化学式、3年生で電気分解とイオン、中和を学習することをお勧めします。

生物学


 1年生で植物学入門、2年生で人体・動物、生態系、3年生で細胞分裂、遺伝を学習することをお勧めします。

地 学


 1年生で岩石と鉱物、地震、2年生で気象学入門を学習することをお勧めします。

天文学


 3年生で初等天文学を学習することをお勧めします。

 最後に、中学校の先生の宿命を申し上げておきます。それは高校入試を無視できないことです。この授業記録を熱心に利用している先生なら指導内容に手落ちはないと思いますが、問題は配列(スケジュール)です。とくに学習塾や模擬テストと進度が一致していない場合は、生徒からもクレームがつく可能性があるので十分注意して下さい。理想と現実のバランスをとることも自然の摂理です。さらに、学習指導要領の内容を逸脱したり、行政機関のスケジュールを無視してはいけません。ほとんどの場合、とても簡単な内容にとどめられているので軽くクリヤーしましょう。

 また、政府による全国統一学力テスト復活の危険性については、自立した中学校教師として厳しい目を光らせて下さい。画一化された問題と数字によって子どもを評価することはできないし、テストによっては学力は向上しません。規格化された子ども作り、テスト業者と行政機関の癒着に役立つだけです。全国統一学力テストに限らず、校内定期テストなどすべてのテストは先生自身の指導内容(方法)を振り返り、今後の授業計画を立てるために行うものです。使い道を誤まり、全ての努力が水泡に帰さないよう自分を戒めて下さい。

 では、みんなで感動溢れる自然科学の道をたどり、美しい神秘に満ちた自然を探究しましょう。


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