このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録:化学分野 です。

Taka先生のカリキュラム案

化学分野 単元3

化学変化

 Mr.Takaは、物質や物体の変化を3つに分類しました。
1 状態変化(物質の相転移、固体・液体・気体)
2 化学変化(ある物質が他の物質に変化すること)
3 物理変化(物体の変形(弾性)など物理学の範囲)

 これら3つの変化うち、本ページでは化学変化をまとめてありますが、1年、2年のどちらかで扱って下さい。1年生なら「植物」の後に、2年生なら年度当初に学習することをお勧めします。

 さて、私は、状態変化→ 化学変化の順に学習することを提案しますが、学校や生徒の実態に合わせて逆にしてもよいでしょう。ただし、どちらから始めるにしても、化学分野の初めの授業で「基本操作:マッチ、ガスバーナー」を指導して下さい。もちろん、「雑巾の洗い方」もです。

 さて、加熱による化合や分解などの化学変化は、生徒にとって楽しみな授業の1つです。鉄と硫黄の混合物を加熱する反応は、火山の噴火のように激しく赤熱するだけでなく、卵が腐った匂いが教室いっぱいに充満します。さらに、生成した硫化鉄を取り出すために試験管を金槌で割って取り出すなど、生徒にとって忘れない要素をたくさん含んでいます。中学校理科に相応しい実験として、是非とも早い時期に行って下さい。

 余談ですが、もしあなたの学校にクーラーがついているなら夏でも構いませんが、寒い冬、みんなで使ったガスバーナーの熱で理科室が暖まるのも忘れ難い思い出です。

◎ 私が実践した生徒実験一覧このページで取り上げた化学変化
 リンクが張っていない緑色のページについては、左ページ『毎時間の授業』から探して下さい。
0 基本操作 マッチ、ガスバーナー
1 鉄と硫黄の化合(硫化)
2 銅と硫黄の化合(硫化)
3 
鉄を熱する(酸化)
4 
銅の酸化(酸化)
5 
マグネシウムの酸化
6 
水素の爆発(激しい酸化)
7 
使い捨てカイロ(穏やかな酸化)
8 
いろいろなものを熱する
9 
有機物を熱する
10 Mgと塩酸の反応
11 金属と塩酸の反応
12 アンモニアを作る
13 
酸化銀の分解(還元)
14 
酸化銅の還元
15 
炭酸水素ナトリウムを熱する(分解)
16 
べっこう飴
17 塩化銅の電気分解
18 塩酸の電気分解
19 水の電気分解
20 化学電池
21 塩酸と水酸化ナトリウムの中和
22 硫酸と水酸化バリウムの中和

23

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授業の展開例
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14時間完了

 次に、毎時間の流れと基本的な考えを紹介します。この展開例では14時間完了になっていますが、先生が興味をもたれた内容を中心にして数時間追加し、発展的な授業を展開して下さい。16時間から20時間完了になるでしょう。さらに可能なら、連続して単元物質と化学式進まれることをお勧めします。/ また、元素記号や化学(反応)式まで一気に指導したい場合は、いくつかの実験をカットし、『物質と化学式』に進んで下さい。


第1時 基本操作 マッチ、ガスバーナー(1年)2002年
 1番初めの授業はこれしかありません。化学分野の基本中の基本。自分でマッチに火をつけ、じっと観察します。燃焼とは何か、食い入るように観察させます。その結果、火を恐れることがなくなり、火を美しいものとして感じられるようになります。化学分野の全ての要素を含んでいるといっても過言ではないと思います。

<準備> マッチとケース、ガスバーナー
1 マッチを5本もらい、何秒間もっていられるか競う
 ・ 火に親しむ
 ・ 科学的な観察
 ・ 燃焼とは何か

2 ガスバーナーのしくみと使い方を知らせる
 ・ ガスバーナーの分解
 ・ 完全燃焼と不完全燃焼
 ・ 火力の調整ができるように

3 他の年度の実践例
 基本操作 マッチ・ガスバーナー(1年)1999年


第2時 
鉄と硫黄の化合(硫化)
(2年)2003年
 本時と次時で、2つの硫化実験を行います。その後、4種類の物質を使った酸化実験を行い、化合についての学習(合計6時間)を終えます。化学反応式は、無理矢理、毎時間ごとに丸暗記させても悪くありません。後から原子記号などを学習したときに役立ちます。
鉄 + 硫黄(混合し加熱する、化合・硫化)→ 硫化鉄
Fe+ S→ FeS
<準備> 鉄4g、硫黄2g、乳ばち、薬包紙、鉄製スタンド、ガスバーナー、セロハンテープ、鉄製スタンド、試験管、(金槌、古紙)
1 本時のねらいを知らせる
2 銅と硫黄の性質をまとめる
3 実験手順の説明と注意
4 生徒実験
 ・ 混合物および化合物を調べる
 ・ 4種類の物質をセロテープで添付する
5 まとめ
 ・ ある物質が硫黄と化合することを硫化という

6 他の年度の実践例
実験7鉄と硫黄の化合(2年)2000年

第3時 銅と硫黄の化合(硫化)(2年)2003年
 とても危険な実験なので、十分な予備実験を行って下さい。自信がない場合は演示実験でも十分です。
銅 + 硫黄(混合し加熱する、化合・硫化)→ 硫化銅
Cu+ S→ CuS

<準備> 鉄4g、硫黄2g、乳ばち、薬包紙、鉄製スタンド、ガスバーナー、セロハンテープ、鉄製スタンド、試験管、(金槌、古紙)

1 本時のねらいを知らせる
2 銅と硫黄の性質をまとめる
3 実験手順の説明と注意
4 生徒実験
 ・ 電子てんびんで計量させる
 ・ 混合物の性質を調べる
 ・ 化合物の性質を調べる
 ・ 4種類の物質をセロテープで添付する
 ・ 考察
5 まとめ
参考資料→ 松田先生から紹介して頂いた鉄と硫黄の化合

第4時 鉄を熱する(酸化)(2年)2003年
 第2時の鉄の硫化と比較させることも重要です。
(空気中で加熱する、化合・酸化)→ 酸化鉄
4Fe+ 3O→ 2Fe

<準備> 鉄(スチールウール)、ピンセット、薬包紙、電子てんびん、ガスバーナー、セロハンテープ、酸素ボンベ、窒素ボンベ

1 本時のねらいを知らせる
2 鉄を燃やすとどうなるか予想させる
 ・ 重さの変化

3 実験手順の説明と注意
4 生徒実験
 ・ 2種類の物質をセロテープで添付する
5 まとめ
 ・ 学級のデータ集めてグラフ化

6 他の年度の実践例
 実験1スチールウールを燃やす(2年)2000年

第5時 銅の酸化(2年)2003年
 第3時の銅の硫化と比較させると、理解が深まります。
(空気中で加熱する、化合・酸化)→ 酸化銅
2Cu+ O→ 2CuO

<準備> 銅粉、燃焼皿、薬さじ、三脚と金網、ピンセット、薬包紙、電子てんびん、ガスバーナー、セロハンテープ

1 本時のねらいを知らせる
2 鉄を燃やすとどうなるか予想させる
 ・ 重さの変化

3 実験手順の説明と注意
4 生徒実験
 ・ 2種類の物質をセロテープで添付する
5 まとめ
 ・ 各班のデータをグラフ化させる

6 他の年度の実践例
 実験13銅と酸素が化合する割り合い(2年)2000年

第6時 マグネシウムの酸化(2年)2003年
 
こんなに面白く、良い結果が得られる実験は珍しい。私の調べた範囲では、この実験授業を行っている学校はないけれど、次の教科書改定の時には採用されると思う。
マグネシウム+ 酸素→ 酸化マグネシウム
2Mg+ O
→ 2MgO

<準備> 銅粉、燃焼皿、薬さじ、三脚と金網、ピンセット、薬包紙、電子てんびん、ガスバーナー、セロハンテープ、10%塩酸

1 本時のねらいを知らせる
2 実験手順の説明と注意
3 生徒実験
 ・ 2種類の物質をセロテープで添付する
4 まとめ
 ・ 各班のデータをグラフ化させる
 ・ グラフ化は2回
 ・ 鉄、銅の酸化と比較させる

5 他の年度の実践例
 実験2マグネシウムの燃焼(2年)2000年

爆発:激しい酸化 これまで固体の加熱による化合(硫化、酸化)を学習してきました。ここで、気体(水素)と酸素の化合を入れても良いでしょう。生徒の実態に合わせて御検討下さい。なお、次時は、穏やかな酸化実験を行い、化学変化には熱の出入りが伴うことを学習させます。比較的ゆっくりとした反応の方が、熱の出入りを実感することができるからです。
 
実験5水素の爆発(1年)2002年
 

第7時 使い捨てカイロ(2年)2003年
 
化学変化には、必ず熱の出入りがあることを理解させる。
Fe+  3/4O+ 3/2HO→ Fe(OH) + 熱エネルギー
<準備> 使い捨てカイロ(生徒に持参させる)
鉄粉10g、食塩1g(触媒)、炭素6g(触媒?)、薬さじ、100mlビーカー、100度C温度計

1 カイロの温度をあげる方法を考えさせる
2 実験1「市販カイロ」
 ・ 中身を出してかき混ぜる
 ・ 1分毎に温度を測定させる

3 実験2「カイロをつくる」
 ・ 手順の説明と注意
 ・ 生徒実験
4 まとめ
 ・ 化学変化には熱の出入りがある

5 他の年度の実践例
 実験4使い捨てカイロ(2年)2000年

第8時 酸化銀の分解(還元)(2年)2003年
 今日から時間にわたって分解実験を行います。今日の実験は簡単なので、授業の前半で化学反応式をまとめると良いでしょう。
酸化銀  →  銀 + 酸素
AgO→ Ag+ O

 
<準備> 酸化銀、アルミホイル、試験管、線香素、鉄製スタンド、ガスバーナー、薬包紙、豆電球と乾電池、酸素ボンベ

1 還元についてまとめる
 ・ 還元(分解)と酸化(化合)をセットにして説明する
2 酸化銀の分解をモデルを使って考える
3 生徒実験
 ・ 金属光沢、金属の展性、通電性
 ・ 酸素の発生を調べる
 ・ 酸化銀と銀を添付する
4 まとめ
5 他の年度の実践例
 実験3酸化銀の分解(還元)(2年)2000年

第9時 酸化銅の還元(2年)2003年
酸化銅+ 炭素 →  銅+ 二酸化炭素
CuO+ C→ Cu+ CO

<準備> 酸化銅、炭、アルミホイル、試験管、ゴム栓ガラス管セット、石灰水、試験管立て、鉄製スタンド、ガスバーナー、薬包紙、豆電球と乾電池、酸素ボンベ

1 銅の還元についてまとめる
 ・ 銅の酸化(2年)2003年と比較させる
 ・ 前時
酸化銀の分解と比較させる
2 酸化銀の分解をモデルを使って考える
3 生徒実験
4 他の年度の実践例
 実験5 酸化銅の還元
(2年)2000年

ここで一息
 ここまで連日実験だったので、知識を定着させるため、教室で落ち着いて復習するのが良いでしょう。練習問題に取り組ませるのも悪くありません。
<実践例>
化学変化(化合)のまとめ(2年)2000年← 化学反応式の指導方法が掲載されています
いろいろな酸化(3年)2004年 
いろいろな還元(3年)2004年 


第10時 いろいろなものを熱する(1年)2002年
 これは1年生の初夏に行った実践なので、少し簡単です。教科書で「白い粉」をテーマにしてあるので、自宅から何種類かを持参させた。また、簡単な基本背負操作ができるようになることも目的にしている。

<準備> 白い粉(生徒に持参させる)、砂糖、食塩、チョーク、デンプン、アルミホイル、スプーン、ガスバーナー、セロハンテープ
1 自宅から白い粉を持参させる
2 生徒実験
 ・ 科学的な方法で調べる
 ・ 共通点や相違点などをまとめる
3 まとめ
 ・ 炭が発生する物質を「有機物」ということを知らせる


第11時 有機物を熱する(1年)2002年
 冷蔵庫に入っている食品は全て有機物です。弁当箱の中身やランチの残りでもOKです。とにかく、いろいろな物を持参させて大いに盛り上がって下さい。理科室に限定して味を調べても良いでしょう。
炭水化物+ 酸素→ 二酸化炭素+ 水

<準備> いろいろな有機物(生徒に持参させる)、アルミホイル、スプーン、ガスバーナー、セロハンテープ
1 復習:有機物について
2 生徒実験
 ・ 科学的な方法で調べる
 ・ 共通点や相違点などをまとめる
3 黒板に結果を発表させる
 ・ すべて炭になることを押さえる
 ・ できれば、水と二酸化炭素の発生も確認する

4 他の年度の実践例
 実験6 炭水化物の燃焼(2年)2000年


第12時 
炭酸水素ナトリウムを熱する
(1年)2002年
 冷蔵庫に入っている食品は全て有機物です。弁当箱の中身やランチの残りでもOKです。とにかく、いろいろな物を持参させて大いに盛り上がって下さい。理科室に限定して味を調べても良いでしょう。
炭酸水素ナトリウム→ 炭酸ナトリウム+ 二酸化炭素+ 水
<内容が簡単過ぎたり、時間にゆとりがある場合> 試験管内で『砂糖』および『デンプン』を加熱する実験も有効だろう。
空気中: 砂糖+ 酸素→ 二酸化炭素+ 水 +(炭)
試験管内: 砂糖    → 炭+ 水

<準備> いろいろな有機物(生徒に持参させる)、アルミホイル、スプーン、ガスバーナー、セロハンテープ
1 本時のねらい
2 生徒実験
 ・ 石灰水、フェルールフタレイン、塩化コバルト紙、
3 まとめ
 ・ すべて炭になることを押さえる
 ・ できれば、水と二酸化炭素の発生も確認する

4 他の年度の実践例
 実験8 炭酸水素ナトリウムの分解(2年)2000年


第13時 べっこう飴(2年)2003年
 ベッコウ飴だけなら『状態変化』の応用として扱うべきですが、ここでは料理用ベーキングパウダー(ふくらし粉、炭酸水素ナトリウム)の応用として取り上げます。大変盛り上がる実験の1つです。
炭酸水素ナトリウム→ 炭酸ナトリウム+ 二酸化炭素+ 水

<準備> いろいろな有機物(生徒に持参させる)、アルミホイル、スプーン、ガスバーナー、セロハンテープ
1 実験の注意と説明
2 生徒実験
3 他の年度の実践例
 実験9 アメ・カルメ焼き(2年)2000年
 実験13 かるめ焼き(2年)2003年
 → カルメ焼きは失敗しやすいので2時間以上必要になりますが、べっこう飴は1時間で美味しくできます。


第14時 これまでのまとめ(2年)2000年
 単元『化学変化』は終了しますが、連続して次の単元『物質と化学式』に進むこともお勧めします。その次は、電気分解→ イオンへと展開するのが自然な流れでしょう。

連続して(あるいは次に)、
単元4『物質と化学式』に進むことをお勧めします。


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