このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録:化学分野 です。

Taka先生のカリキュラム案

化学分野 単元1

状態変化

 私は、物質や物体の変化を次の3種類に分類しました。
1 状態変化(物質の相転移、固体・液体・気体)
2 化学変化(ある物質が他の物質に変化すること)
3 物理変化(物体の変形(弾性)など物理学の範囲)

 これらのうち、本ページでは状態変化をまとめてあります。1年生後期、あるいは、2年生で扱うことをお勧めしますが、いずれにしても基本操作「マッチ、ガスバーナー」は1番初めの授業で指導して下さい。

 さて、中学生レベルでの状態変化とは、ある物質が固体・液体・気体に変化することです。物質そのもの(原子や分子)はそのままで、原子や分子の結合状態や互いの関係が変化することです。これを説明するためには、原子・分子モデルが必要になりますが、中学1年生では難し過ぎます。目に見えない複数の分子の状態をイメージさせるのは容易ではありません。

 例えば、水の状態変化について考えてみましょう。氷は、水分子が規則正しく並んでいる状態(結晶。固体)です。水蒸気は、水分子がばらばらになって飛び回っている状態(肉眼で見えない。液体)です。そして、液体の水は、水分子が・・・さあ、みなさんが説明して下さい。どうです。かなり難しいことが分かったでしょう。

 結論として、化学変化と状態変化を比較した場合、物質そのものが変化する化学変化の方が興味深く、説明しやすい場合が多いのですが、私の授業実践では、状態変化化学変化物質と化学式の順に配置しました。中学校の現場では、3年生の卒業前に、中学校理科の楽しい思い出作りと状態変化の復習を兼ねて「液体窒素の演示実験」を行って下さい。多くの生徒が自分の成長にした姿に感動するでしょう。

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授業の展開例
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11時間完了

 次に、毎時間の流れと基本的な考えを紹介します。この展開例では11時間完了になっていますが、先生が興味をもたれた内容を中心にして数時間追加し、発展的な授業を展開して下さい。

 なお、第7時から第10時までは気体(二酸化炭素、酸素、水素、アンモニアの4種類)の性質を調べる学習なので、独立して指導することも可能です。その場合、状態変化は最短で5時間完了(第2時〜第6時)になります。


第1時 基本操作 マッチ、ガスバーナー(1年)2002年
 1番初めの授業はこれしかありません。化学分野の基本中の基本。自分でマッチに火をつけ、じっと観察します。燃焼とは何か、食い入るように観察させます。その結果、火を恐れることがなくなり、火を美しいものとして感じられるようになります。化学分野の全ての要素を含んでいるといっても過言ではないと思います。

<準備> マッチとケース、ガスバーナー
1 マッチを5本もらい、何秒間もっていられるか競う
 ・ 火に親しむ
 ・ 科学的な観察
 ・ 燃焼とは何か

2 ガスバーナーのしくみと使い方を知らせる
 ・ ガスバーナーの分解
 ・ 完全燃焼と不完全燃焼
 ・ 火力の調整ができるように

3 他の年度の実践例
 基本操作 マッチ・ガスバーナー(1年)1999年


第2時 水の状態変化(1年)2002年
 ビーカーに入れた水を沸騰させるだけの非常にシンプルな実験が、科学的な視点を持たせると発見に満ちあふれた面白い実験に変わります。
(加熱する、沸騰)→ 水蒸気
O → H
<準備> 水200ml、ビーカー300lm、試験管、100度C温度計、沸騰石、三脚、金網、鉄製スタンド、ガスバーナー、古紙
1 水を加熱したときに出てくる「泡」は何か、予想させる。
生徒の予想: 気体、酸素、二酸化炭素、水蒸気、水素
2 生徒実験
3 あわの正体を考える
・ 大きな泡が、試験管の途中で消えるのは?

5 まとめ
・ 気化(沸騰と蒸発)について
・ いろいろな温度の水、いろいろな温度の氷がある
・ 水蒸気の温度や圧力には触れない方が良い
・ 詳細は、物理学の『大気圧』で学習する

6 他の年度の実践例
 状態変化(1年)1999年

第3時 パルミチン酸の融点・凝固点(1年)2002年
 今日も単純な実験ですが、生徒は非常に熱心に測定します。ポイントは30秒毎に測定させることと、正確なグラフを書かせることです。科学的な実験・測定が、美しい結果となります。また、次時、有害なパラジクロロベンゼンなどを使って、全く同じ実験をすることもお勧めします。単純な復習より何倍も効果があります。
パルミチン酸(加熱、融解、63度C)→ パルミチン酸
パルミチン酸
(冷却、凝固、63度C)→ パルミチン酸

1 状態変化の復習
2 融点、凝固点について
3 生徒実験
4 データのグラフ化
5 まとめ
・ 気化(沸騰と蒸発)について
・ いろいろな温度の水、いろいろな温度の氷がある
・ 水蒸気の温度や圧力には触れない方が良い
・ 詳細は、物理学の『大気圧』で学習する

6 他の年度の実践例
 実験7融点・凝固点(1年)1999年
 
第4時 エタノールの沸点(1年)2002年
 今日も単純な実験です。しかし、手順が分かっているので手際よく、より深い思考ができます。沸点と露点、
エタノール(加熱、沸騰、78度C)→ エタノール

1 沸点について
2 物質の粒のモデルを使って説明する
3 生徒実験
4 データのグラフ化
5 まとめ
・ 気化(沸騰と蒸発)について
 
第5時 蒸 留(1年)1999年
 生徒の目前で、無色透明の水とエタノールを混合します。再びこれらを分けることは不可能のように思いますが、その方法を考え、実際に分離(蒸留)します。
1 蒸留について
2 水とエタノーの混合物を分ける方法を考える
・ 状態変化(液体→気体)(気体→液体)
・ 化学変化をさせてはいけない
・ 水とエタノールの沸点の違いを使う

3 生徒実験
4 まとめ
・ これは1年生の実践なので、分子モデルを使った説明ができませんでしたが、3年生なら是非とも目に見えない気体の状態を視覚的にイメージさせて下さい。
 
第6時 みりん、ワインの蒸留(1年)2002年
 前時の確認、応用実験です。自宅から持参させた「みりん」「日本酒」「ワイン」「ウイスキー」「ラム酒」などから、エタノールを取り出します。色や匂いが変化に富んでいるので盛り上がります。
1 生徒実験
2 結果発表
3 まとめ
4 他の年度の実践例
 いろいろな蒸留実験(1年)1999年


ここから気体の性質について学習しますが、

小学校で終了している場合もあるので、生徒に確認して下さい。
 
第7時 いろいろな気体<二酸化炭素>(1年)1999年
 1つの気体を3種類の方法で発生さることは、思考の幅を広げることになります。また、ここでは二酸化炭素の気体という状態における性質に着目していますが、他にもいくつかの切り口があるので先生方で工夫して下さい。

1 二酸化炭素の発生方法を確かめる
 1> ふくらまし粉を熱する
 2> 入浴発砲剤を水に入れる
 3> 塩酸に貝殻、または、卵の殻を入れる

2 二酸化炭素の性質をまとめる
 ・ 水によく溶ける

3 生徒実験
4 他の年度の実践例
 質量保存の法則の続き(2年)2003年
 ・ 気体(二酸化炭素)にも重さがあることを確かめる実験です。また、密度を求める実験、さらに、化学変化の質量保存の法則を説明するためにも使えます。
 
第8時 酸素を調べる(1年)1999年
 他の学習内容と関連性が少ない単純な実験です。どんどん生徒に操作させて下さい。

1 酸素の性質をまとめる
2 生徒実験
・ 水上置換法、上方置換法、下方置換法

3 他の年度の実践例
 二酸化炭素、酸素の性質(1年)2002年
 
第9時 水素の爆発(1年)2002年
 生徒が大喜びする実験です。この実験も、たくさんのアプローチがあります。化学変化:亜鉛(金属)と塩酸(酸)による水素の生成、水素と酸素の化合による水の合成など。

<準備>
亜鉛5個、5倍に薄めた塩酸5ml
1 水素の性質をまとめる
・ 宇宙で1番軽い
・ 水に少し溶けない
・ 水上置換法で集める
・ 火をつけた線香を入れると爆発する
2 生徒実験
3 発見したことを発表する
 他の年度の実践例
 実験10水の電気分解(2年)2000年
 
第10時 アンモニアの噴水(1年)2002年
 
とても臭くて奇麗で、できたー! やったー! と叫んでしまう実験です。是非、全員に成功する喜びを味合わせて下さい。

1 アンモニアの性質をまとめる
・ 空気より軽い
・ 水に非常の溶けやすい
・ アルカリ性(フェノールフタレイン液を赤。ぬるぬる)
・ 特有の刺激臭
→ 匂いを嗅ぐと鼻がつぶれる 危険!!
2 実験手順を演示する
3 生徒実験
4 噴水ができる理由を考える
5 他の年度の実践例
 アンモニアの噴水(1年)1999年
 
第11時 演示実験 液体窒素(1年)2002年
<プログラム>
1 いろいろな物を凍らせる <超低温との出合い>
2 液体窒素に触れる <-196度Cに触れる>
3 状態変化『気化』 <液体→気体の観察>
4 空気の状態変化  <液化・気化の観察>
5 二酸化炭素の冷却 <ドライアイスを作る>
6 酸素の液化    <液体酸素の性質を調べる>
7 エタノールの冷却 <固体エタノールの観察>
8 マイスナー効果の観察
9 フィルムケース・ロケット <気化による膨張>
詳しい実験手順は、 実験5 液体窒素による状態変化(1年)1999年

次に、単元3『化学変化』、または、単元2『水溶液』へ進むことをお勧めします。

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