このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録:化学分野 です。

Taka先生のカリキュラム案

化学分野 単元2

水溶液

 初めに、溶液についてまとめたページを御覧下さい。じっくり読んで頂くと、中学校では溶液の定義を教えるより、溶媒を水に限定した水溶液を詳しく学習するほうが、高校の化学へとつながることが分かります。また、水溶液、イオン、酸とアルカリの関係が明確になり、学習カリキュラムが見えてくるでしょう。

 この単元は、重量パーセント→ 飽和水溶液→ 溶解度(曲線)→ 再結晶の順に構成されています。しかし、中学校化学という視点に立った時、それらのうち、どれを切り離しても大きな問題は生じません。先生方の判断で、ばらばらに解体し、適当な単元に組み込むことが可能です。このことは、文部科学省の学習指導要領における「溶解度」の扱いが、度々変更されることからも証明されます。

参考資料:学習指導要領
ア 重量パーセント(水溶液の濃度計算)を数学で扱っています(現行の教科書)。
イ 溶解度曲線(溶解度の定量)は、旧要領では指導項目でしたが、現行では削除されています。

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授業の展開例
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時間完了

 第1時から第3時までは、中学1年の実践です。2、3年生で行う場合はカットしても良いでしょう。ただし、硫酸の恐ろしさを知らせるために、濡れ雑巾を溶かす演示は行って下さい。くれぐれも先生の手を溶かさないように十分注意して・・・。

 第4時は質量パーセント濃度(重量パーセント濃度)の学習です。多くの公立中学校の実態は、どのクラスにも九九ができない生徒が数人いますので、理科の授業で3時間以上使うのは誤りです。数学の先生に助けを求めるのが正当です。

 第5時と第6時は溶解度、第7時と第8時は飽和水溶液と再結晶の学習です。こられ4時間は、地学分野の「飽和水蒸気量」「湿度」「露点」と密接に関連していますが、化学分野の「溶解度」は時間がなければカットしても良いと思います。中学生にとって、「濃度100%の水溶液」と「飽和水溶液」の違いを説明することは容易ではありません。 ※食塩水溶液を例にとって説明すると、濃度100%の食塩水はありません。なぜなら、温度や圧力などの条件によって変わりますが、水100gにとける食塩の量には限度(飽和)があるからです。食塩が38g溶けたとすると、計算式: 38/100+38=0.275により、食塩の「飽和水溶液」は濃度28%になります。 溶液、水溶液はとても奥が深い分野なので、どれだけ時間をかけても足りないと実感するでしょう。混合液、コロイドなどには手をつけてはいけないと思います。


第1時 5つの水溶液(1年)1999年
 水溶液の1時間目は、じゅじゅじゅーっ、濡れ雑巾を硫酸で溶かして見せましょう。硫酸がものすごい液体であることを知っていても、無色透明、無臭の液体の力に生徒達はびっくり仰天します。5つの透明な液体(水、食塩水、砂糖水、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)の実験は、次時も行います。

1 演示実験『硫酸で雑巾を溶かす』
・ 『薬品』を慎重に扱うこと
・ 準備室に無断で入らないこと

2 5つの水溶液の紹介
3 生徒実験
・ リトマス紙で調べる
・ においを調べる
・ 手触りを調べる


第2時 5つの水溶液2(1年)1999年
 第1時の続きです。ただし、ビーカーにはAからEの記号が書いてあるだけで中身を知らせません。いくつかの方法で水溶液が何であるか調べてもらうことにします。私の実践では、次の7つの水溶液について調べました。
調べる水溶液: 水、食塩水、砂糖水、塩酸、エタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液

1 生徒実験
調べる方法(1:色、2:BTB、3:リトマス紙、4:におい、5:手触り、6:水分を蒸発させる、7:金属(アルミニウム、銅)を入れる)
2 結果発表
3 正解発表
4 まとめ


第3時 水酸化カルシウム・炭酸カルシウム(1年)1999年
 本時のねらいは、基本操作「ろ過」の復習、石灰水について理解を深めること(前者の飽和水溶液)です。本単元とのテーマとは直接結びついていないのでカットしても構いません。

1 2つ物質(固体)の状態観察
2 2つの水溶液を作る
3 水溶液を調べる
方法(1:ろ過、2:色、3:リトマス紙、4:水分を蒸発させる、5:息を吹き込む)
4 結果のまとめ


第4時 質量パーセント濃度(1年)1999年
 数学科と連係して行いたい内容です。入試にも出題されることがあります。さあ、みなさんも右図をみて問題を解いて下さい。問題『右図ののうち5%の水溶液はどちらですか? 記号で答えなさい』

┌──<ミスターtakaの公式>───────┐
(濃さ)=(しお)÷(全体)×100
└────────────────────┘
 復習と練習問題を合わせると少なくとも2時間必要になりますが、それ以上の時間をかけることは理科として大きな痛手になるので注意して下さい。


第5時 溶解度を測る(1年)1999年
 自宅から『食塩』と『砂糖』を持参させ、一定量の水にどれだけ溶けるか測定しました。班毎に水の量を変えたのですが、クラス全体で測定結果をまとめるのは難しいようでした。限界があることを確認するだけで、良かったと反省しています。
1 本時のねらいをつかむ
2 溶解度についてまとめる
 水100gに溶かすことができる物質の限界量(g)
3 生徒実験
4 まとめ
5 他の年度の実践例
 溶解度2(1年)1999年

第6時 ミョウバンの溶解度(1年)2002年
 実験によってミョウバンの溶解度曲線を求めました。少なくとも温度を上げればたくさん溶けることが分かればよい、と思っていたけれど、生徒の目的意識が高く一生懸命実験をしていました。

1 小学校の復習
2 実験方法を知る
1 ミョウバン1gを水10gに入れる
2 水を温め、全て溶けた時の温度を測定する
3 ミョウバン1gを追加し、同様に測定する
4 操作2、3をくり返す

3 生徒実験
4 まとめ
5 他の年度の実践例
 溶解度3(ミョウバンの溶解度曲線)(1年)1999年

第7時 復習、練習問題の時間
 質量パーセント、溶解度にについて、少なくとも1時間は練習問題だけに使うが必要あります。


第8時 溶解度4(再結晶)
(1年)2002年

1 硫酸銅とミョウバンの結晶を採取する
2 溶解度曲線の復習
3 グラフから、再結晶の量を計算する


簡単な研究 飽和水溶液と再結晶(1年)2002年
 温度ではなく、水を蒸発させることで水溶液に溶けている物質を再結晶させます。方法は、自宅から食塩とペットボトルを持参させ、理科室で食塩の水飽和溶液を作ります。その後は、家庭での自由研究「食塩の結晶づくり」にします。とても単純な操作・実験ですが、生徒は嬉々として行います。イメージと期待が膨らんでいる証拠です。

1 飽和水溶液についてまとめる
2 演示実験『硫酸銅の拡散』 → 画像
3 食塩の飽和水溶液をつくる
4 再結晶(自由研究)の方法


次に、単元5『電気分解・イオン・中和』へ進むことをお勧めします。

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