
生物学
単元1 植物学入門
植物学入門は新入生に最適です。年間予定を計画している先生は、迷うことなくこの単元を選択して下さい。
暖かな日ざしを浴びた春の校庭、僅かな土が残っている校舎の片隅、学校から歩いて5分程度の距離にある小さな公園には、希望に満ち溢れた子ども達のような可憐で美しい野草が花を咲かせています。たくさんの植物が花を咲かせる春に、小学校からステップ・アップした中学校理科の授業をスタートさせることは、とても自然です。日本を代表するサクラ、大きく単純で花のつくりが調べやすいツツジ、身近でありながら多くの驚きを持っているタンポポは、是非とも扱いましょう。
植物分野の授業の基本は、1日1観察です。毎回1種類以上の実物を観察させて下さい。具体的な展開例は、別ページで紹介されているので心配いりません。新任の先生には時間的に厳しいものがあると思いますが、何度も読んでイメージトレーニングして下さい。初めのクラスでは50分でできなかった内容が、2クラス、3クラスとくり返すうちに楽々50分で完了できるようなります。尚、私はノートの代わりに、毎時間オリジナルプリント(B4版)を準備しています。この「理科プリント」と呼ばれるオリジナルプリントは、各生徒が用意した専用ファイルに綴じさせます。また、評価について悩むことなく、分野全体の大きな流れを掴むことを心掛けて下さい。評価についての考え方は、別ページを用意しましたので、必要な方は参考にして下さい。
さて、私が皆さんにお勧めしたいのはセロハンテープの利用です。採取した植物を簡単に張り付けられるので、1人ひとりの生徒が自分だけの植物図鑑を簡単につくれます。セロハンテープは生徒自身に持参させます。100円均一ショップで、カッターが付いたもの大きなものを購入させると良いでしょう。もちろん、学校でも準備しておきますが、他の分野でも利用も含め、私の授業では年間50巻(150人)消費します。
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授業の展開例
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20時間完了
次に、毎時間の流れと基本的な考えを紹介します。先生が興味をもたれた分野については数時間追加し、発展的な授業を展開して下さい。
第1章
私の植物図鑑 |
→ |
第2章
花 |
→ |
第3章
根、茎、葉 |
→ |
第4章
光合成と呼吸 |
→ |
第5章
多様な植物の分類 |
1オリエンテーション
2校舎内の野草
2時間 |
1花のつくり
2花のはたらき
3裸子植物の花
6時間 |
1根と葉脈と子葉
2維管束
3蒸 散
3時間 |
1葉緑体
2CO2とO2の出入り
3光合成
4呼 吸
5時間 |
1シダ植物
2コケ植物
3藻 類
4植物の分類
4時間 |
図1 植物学入門の章立て
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第1章 私の植物図鑑 |
第1時 オリエンテーション2002年4月
先生の自己紹介は必要ですが時間をかけはいけません。私がどれだけ自然を愛しているか、初日から植物観察の実習をさせることによって伝えることの方が遥かに有効です。
<授業内容>
実習: 校庭に出て、2種類以上の標本を作らせる
<準 備>
学習プリント、セロハンテープ
<他の年度の実践例>
1999年4月 観察1 校舎内の野草
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第2時 実習1名南中・野草図鑑1年(2002年)
第1時と同じように、校内の野草図鑑を作らせて下さい。2時間合わせて、少なくとも10種類はできるでしょう。花の色や花弁の数によって分類するのも良いでしょう。また、時間にゆとりがある場合は、1、2時間追加したり、近所の公園まででかけるのも良いでしょう。学年行事の1つすることもできます。
<準 備>
前時と同じ
<他の年度の実践例>
1999年4月 観察2 野草図鑑<千鳥丘中学校編>
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第2章 花 |

第3時 花のつくり(ツツジ)2002年4月
どんな種類の花でも良いが、ツツジの花は大きく分かりやい
<準備> 生徒に、セロハンテープと専用ファイルを持参させる
1 すべての植物花のつくりは、中心から調べる
1雌しべ 2雄しべ 3花弁 4がく片
2 実習: 花を分解し、標本を作成させる
次の点も観察さても良い ・子房、胚珠、花柱、柱頭 ・花糸、ヤク、花粉 ・花弁の模様、花弁の突起(1枚だけ) ・5枚の花弁の大きさの違い
3 他の年度の実践例
花のつくり1年(1999年)・イネ科の植物は、花のつくりが難しいので避けるのが無難でしょう ・園芸品種も、花のつくりが激しく変形しているので避けるのが無難です
(番外)花のつくり1年(1999年)
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第4時 タンポポの花2002年4月
<準備> 生徒に、いろいろなタンポポ(白花、西洋、在来など)を持参させる
1 タンポポの種類を紹介する
2 合弁花類の花つくりを調べ方を知らせる
・前時は離弁花類(ツツジ)・花のつくりの調べ方は同じ
3 実習: ルーペの使い方を知らせる
4 実習: タンポポの花を分解し、標本を作成させる
・雌しべの下部にある子房(種子)も観察させる ・がく片→ わた毛であることを確認する
5 他の年度の実践例
1999年4月 タンポポを調べる
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第5時 いろいろな花2002年4月
<準備> 生徒に、いろいろな花を持参させる
1 いろいろな花を紹介する
2 実習: いろいろな花を分解し、標本を作成させる
・ どんな花でも、調べ方は同じ
・ チューリップは、花弁(3枚)とがく片(3枚)が同じ形、色
・ 次時につながるように、子房についても簡単に観察させる
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第6時 花のはたらき2002年4月
植物分野で1番難しいところなので、新任先生は教室でも良い
<準備> 教師が、ナズナ、タンポポなど季節の種子を生徒1人に1つずつ用意する
1 花の各部の名称の復習
2 雌しべの『子房』内部のつくりを理科便覧で調べる
・胚珠、卵に着目させる ・卵(受精)→受精卵 ・受粉と受精の違い
3 受精後の変化をまとめる
・胚珠→種子 ・卵→胚(赤ちゃん、ベイビー) ・子房→果実
4 リンゴの場合について調べる
・ 逆さまのリンゴの絵をかく ・私たちが食べているリンゴの部分は?→子房 ・リンゴの尻についている『毛』のようなものは?→柱頭、花柱が変化したもの ・雄しべ、花弁、がく片は?
5 実習: いろいろな植物の種子調べたり、標本を作成する
・ナズナ、タンポポなど ・教師が校庭から採取したものを配付しても良い
6 他の年度の実践例
1999年4月 (番外)花のつくり
・ イネ科の植物は花のつくりが難しいので避けるのが無難でしょう
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第7時 果実・種子・胚2002年5月
<準備> 生徒に、いろいろな果実や種子を持参させる
<準備> 教師が、玄米を生徒の人数分用意する
1 前時の復習
・ 簡単な練習問題も有効です
2 実習:いろいろな植物の果実・種子・胚を観察し、標本を作る
・種子の中から胚(赤ちゃん)を取り出す ・例外としてイチゴの果実を紹介する(食べる部分は『花床かしょう』) ・あまった果実は食べても良い(デザート会になったりして、、、)
3 他の年度の実践例
種 子(カラスノエンドウ)1年(1999年)
種子2(カエデ)1年(1999年)
観察5 いろいろな種子3年(2001年)
観察5『種 子』3年(1998年)
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基本操作 双眼実体顕微鏡(花のつくり)1999年5月
第2時から第6時までの間に、双眼実体顕微鏡の使い方を教えると良い。ただし、ルーペを先に指導すること。双眼実態顕微鏡は、これから先の観察・実験で使用する頻度が少ないから焦る必要はない。だたし、単眼ではなく両目で見た時、試料が立体的に見えることや、双眼鏡を使って両目の幅を調整する方法は抑えておきたい。
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第2章 第3節 裸子植物の花 |
第8時 マツ・イチョウ(裸子植物)の花2002年5月
<準備> 生徒に、マツの雄花、雌花、松ぼっくりを持参させる。教師が、マツの雄花を生徒の人数分用意する。
1 被子植物と裸子植物の違い
2 観察: マツ
・雄花のりん片(やく、花粉) ・雌花のりん片(胚珠)、松ぼっくり
3 他の年度の実践例
1999年5月 マツ、イチョウ
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第3章 根、茎、葉 |
第9時 根と葉脈と子葉2002年5月
今日は分かりやすくて楽しい授業の1つです。
1 双子葉植物と単子葉植物の「子葉・葉脈・根」について
2 実習:双子葉植物と単子葉植物の「葉脈」と「根」
3 他の年度の実践例
1999年6月 葉脈と根のつくり
・葉のつき方 互生:互い違いについている、対生:2枚が向かい合っている、輪生:3枚以上輪になってついている
・植物全体の型 直立型:茎が長く直立する、ロゼット型:葉を地面に広げる、ほふく型:茎が地上をはう、くさむら型:根元で株をつくる、分枝型:主な茎がはっきりしない、つる型:つるで巻き付く
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第10時 維管束(道管と師管)2002年5月
1 道管(水)を師管(養分)の集まりを維管束という
2 演示:24時間赤インク水溶液につけておいたセイタカアワダチソウ
3 スケッチ: 同上の維管束
4 顕微鏡観察: 単子葉植物と双子葉植物
・市販プレパラートを利用します ・単子葉植物(トウモロコシの茎など) ・双子葉植物(ホウセンカの茎など)
5 他の年度の実践例
1999年6月 維管束
6 参考資料 維管束の観察方法2
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基本操作 プレパラートの作り方と顕微鏡
この辺りで、プレパラートの作り方と光学顕微鏡の使い方を学習しておくと良いでしょう。小学校で学習した生徒にとっても、復習は有効です。時間に余裕があれば1時間たっぷり、余裕がなくても15分使ってプレパラートの基本的な作り方をおさえて下さい。今後につながります。2002年度の実践では、時間の余裕がなかったので、次の気孔のはたらき(蒸散)で簡単に説明しました。
なお、微生物を使えば、生徒の興味関心を強く惹きますが、植物というテーマから逸れてしまうので注意が必要です。
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第11時 気孔のはたらき(蒸散)2002年5月
ツユクサが有名ですが、何でも観察できます。校庭にあった沈丁花の葉を引き裂いたら、素晴らしい気孔が!
<準備> 顕微鏡・プレパラートセット、校庭の植物の葉
1 蒸散についてまとめる
2 観察: 気孔を観察する
できる生徒には、自分の好きな植物で!
3 ワセリン(植物の油)を使った実験
・教科書の説明にとどめる ・気孔が『葉の表』にないことは、顕微鏡で確認させた方が効果的
4 他の年度の実践例
1999年6月 葉、気孔(顕微鏡)
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第4章 光合成と呼吸 |
第12時 葉緑体のはたらき(光合成)2002年5月
ツユクサが有名ですが、何でも観察できます。オオカダナモの葉緑体に、光学顕微鏡で光をしっかり当てると原形質流動が観察できます。2002年度は、顕微鏡2回目となります
<準備> 顕微鏡・プレパラートセット、校庭の植物の葉
1 葉緑体のはたらき(光合成)についてまとめる
2 観察: 葉緑体を観察する
・ できる生徒には、自分の好きな植物で!
3 他の年度の実践例
2002年5月 オオカナダモの葉緑体(光合成)
2004年4月 オオカナダモの細胞
1999年6月 葉緑体(オオカナダモ)
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第13時 よう素反応(デンプンの合成)2002年5月
シロツメクサが有名ですが、太陽の光をいっぱいに浴びた植物の葉なら、何でも実験成功です。生徒に自分の好きな植物を選ばせると、やる気が倍増します。
<準備> ろ紙、ヨウ素液、校庭の植物の葉
1 ヨウ素液の性質についてまとめる
2 実験: 葉で『でんぷん』が合成されることを調べる
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第14時 光合成で使われる気体(二酸化炭素)1年(2002年)
太陽が出ていれば、ともてはっきりとした結果が得られる実験なので、是非行って下さい。小学校で学習した石灰水の性質を利用して、タンポポの葉が二酸化炭素を吸収していることを確かめます。この実験は、次のBTBを使った実験よりも分かりやすいのでお勧めです。
<準備> タンポポの葉、石灰水、試験管2本、試験管立て、アルミホイル
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応用実験 光合成(BTB)1年(1999年)
快晴の直射日光を使っても、20分では結果が出ません。前時を行ってゆとりがある場合に行って下さい。この実験でも二酸化酸素の出入りを調べます。
<準備> 校庭の植物の葉(タンポポなど)タンポポの葉、BTB液、水酸化ナトリウム水溶液、ストロー、試験管3本、ゴム栓3つ、試験管立て、アルミホイル
1 BTB液の性質についてまとめる
2 実験: 光合成
・二酸化炭素の出入りを調べる
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第15時 植物の呼吸1年(2002年)
植物も呼吸しています。呼吸とは、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことです。その目的は、でんぷんなどの養分を化学的に分解して生活に必要なエネルギーを取り出すことです。
でんぷん+ 酸素 →(呼吸)→ 二酸化炭素+ 水+ 生活エネルギー
簡単な実験を行いますが、ほどんとの班が良好な結果を得られるので満足するでしょう。
<準備> たくさんの雑草、無色透明のビニール袋、ゴム栓ガラス管セット、輪ゴム、試験管、石灰水
<他の年度の実践例>
実験2植物の呼吸1年(1999年)
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第16時 光合成と呼吸1年(2002年)
今日でこれまでのまとめをする時間です。また、次時から植物の分類を見据えてシダ植物、コケ植物、藻類など多様な植物について調べます。
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第5章 多様な植物の分類 |
第17時 シダ植物1999年6月
<準備> 生徒に、いろいろなシダ植物を持参させる
1 シダ植物の特徴をまとめる
・胞子でふえる→ これまでは種子でふえる種子植物 ・葉(葉柄)、地下茎、根について ・前葉体の『造卵器(卵子)』と『造精器(精子)』
2 シダ植物の一生をまとめる
・ 胞子嚢の集まり、胞子嚢、胞子
3 観察: シダ植物のからだ、胞子嚢の集まり
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第18時 コケ植物1999年6月
<準備> 生徒に、いろいろなコケ植物(鮮苔類)を持参させる
1 コケ植物の特徴をまとめる
・胞子でふえる ・雄株と雌株 ・仮根(水は、からだ全体から吸収) ・鮮類(横に広がるもの、ゼニゴケ)と苔類(上に伸びるもの、スギゴケ)の2つに分類される
2 コケ植物の一生
3 観察: コケ植物
4 シダ植物とコケ植物の違い
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第19時 藻 類1999年6月
<準備> 生徒に、いろいろな藻類を持参させる
1 藻類の特徴をまとめる
・胞子、分裂、接合などでふえる ・水中で生活する
2 藻類の一生
3 観察: 藻類
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第20時 植物の分類1999年6月
教室で、植物の分類方法を学習すると良いでしょう。これまでの総復習になるばかりではなく、ばらばらに集めた知識を系統的にまとめ直すことができます。練習問題で、知識の定着をはかることも大切です。/ さて、植物の分類は、伝統的な方法で構いませんが、もっと大きな生物全体の分類には注意が必要です。つまり、最近の生物学では、生物を「動物界」「植物界」「菌界」「モネラ界」「原生生物界」の5界に分ける(五界説)のが一般的になっています。教科書(私の1999年6月の実践)のように「動物」と「植物」の2つに分類し、「植物」の中に菌類・細菌類を入れるのは不適切です。ですから、これから植物の分類を指導される先生には、次のように分類することをお勧めします。→ 生物の分類 → 生物(生命)とは何か
| 生 物 |
植物界 |
・ 光合成を行う独立栄養生物(生産者)
・ 多細胞
・ 胚発生
・ 胞子体と配偶体の世代交代を行う |
| 動物界 |
・ 従属栄養生物(消費者)
・ 多細胞
・ 卵と精子による生殖
・ 配偶体世代をもたない |
その他の界
(菌類、細菌類など) |
・ (分解者)
・ 高校でのお楽しみ・・・ということで |
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以上です!!
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