このページは『世界自然遺産に指定されたばかりの
父島と毋島を巡る13日間の旅
2012 march.20 - april 1 です。

旅の技術と率直なアドバイス

 小笠原は自然を愛する大人のための島です。時間と金が必要です。しかし、贅沢を楽しむためのリゾートではありません。観光客や島民が贅沢を望むようになったとき、小笠原は唯一無二の自然を失うでしょう。ある程度の不自由を承知の上の旅行でなければ、あなたは有害な外来生物と同じです。子どもは、自分で働いて溜めた金で訪れることを目標にしましょう。それだけ貴重な島であり、本当の自然の価値と意味を知らなければ、楽しむことも守ることもできない島だと思います。しっかり勉強してから訪問してください。

目 次   
1 名古屋から小笠原まで

2 気候と服装
3 持ち物

4 お金(かなりアバウトな予算)
5 山歩き
6 海で遊ぶ
7 宿泊施設
8 食料事情
9 交通機関
10 旅を終えて


1 名古屋から小笠原まで
 名古屋から東京都竹芝桟橋へ、そこから父島へ船を使います。その他の方法は、チャーター船、チャーター飛行機しかないので、迷うことはないでしょう。定期船は
『おがさわら丸(小笠原海運)』と『共勝丸(株式会社共勝丸)』の2つがありますが、利便性から『おがさわら丸』で決まりです。


 東京竹芝桟橋と父島二見港の間は、25時間30分です。日程スケジュールは、小笠原海運のHPで確認してください。ハイシーズンで3日に1便、通常は7日で1便です。したがって、最低1週間なければ観光できない、と考えください。料金は往復5.5万円程度からです。

写真右:深夜の2等船室

 父島と母島は、定期船『ははじま丸』で結ばれています。ははじま丸とおがさわら丸は連絡しているので、竹芝桟橋から毋島まで、比較的スムーズに行くことができます。毋島からの帰りも同じです。

 なお、小笠原諸島で、一般観光客が定期観光船で訪問できるのは父島と毋島だけです。小笠原海運は1年に1回、硫黄島への船を出していますが、上陸はできません。

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2 気候と服装
 私が旅行した2012年3月末は寒かったです。イメージは南国なのですが、Tシャツ1枚で過ごした日はなかったように思います。逆に、長袖フリーズを毎日のように着ていました。とくに朝夜はよく冷えます。

 また、海上は海水をバシャー、風をびゅんびゅん浴びるので極寒です。雨具またはウィンドブレーカーは必携です。ダイバーの方は、ドライスーツがお勧めです。ウエットなら7mm欲しいです。私は5mmでしたが、がくがくに震えまくっていました。あとから調べると、これは体内深部が35度C以下になると自動的に始まる激震で、低体温症の初期症状でした。あなおそろし。

写真右:シュノーケリング後の私
 ウェットスーツ上半身を脱ぎ、Tシャツ、スウェット、ウインドブレーカーを着込んで、だるまのように膨らんでいます。貸バイクで移動するので、これだけ着込まなければ、瞬時に病気になるでしょう。何しろ、海から上がってきた時点でガクガクですからね。

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3 持ち物
 お金さえあれば、手ぶらで大丈夫です。船の中でも小笠原でも購入できます。ただし、物品の種類は限られているので、すぐに必要なもの、こだわりのグッズはお持ちください。荷物は特別に小さくする必要はありあせん。キャンプ禁止さていることもあり、同じ宿で滞在し続けることになるからです。

 東京都内と同じ料金で郵送できるので、1週間前に準備して郵送されることをお勧めします。船に持ち込むことは、意外に大変で、別に預けると別料金になります。

写真右:父島ペンションで撮影した私の荷物
 50リットルと35リットルのバックを持っていきました。大きな方は、名古屋まで1400円(郵便)でした。驚きの安さで翌日到着しました。重さとは関係なく、体積で料金が決まるようです。

 以下に、私の荷物を紹介します。

A) 貴重品
 現金10万円、クレジットカード2、財布1
 ※もっとも大切なのは銀行カード、および、郵便局のカードです。私はいずれも忘れてしまい、現金10万円で13日間生き残りました。名古屋に戻った時の残金は1000円。かなり厳しかったです。クレジットカードが使えたのは、2箇所だけでした。1つは父島のダイビングショップ『パパス』、もう1つは毋島の宿『ラメーフ』。いずれも質を重視した満足できるところでした。とくに驚いたのは、高額な支払いをするダイビングショップでも扱っていないところが多いことです。お陰で、毋島では1日しか潜れませんでした。とほほ。
  
B) 撮影器材、パソコン、通信機器
 ニコン D700、レンズ18-200、ショルダータイプの鞄(黒)
 バッテリー2、充電器、メモリーカード2枚(4G、8G)
 Olympus xz-1、メモリーカード1枚(16G)
 水中用ハウジング、ワイドコンバージョンレンズ(PTWC-01)
 カードリーダー1、パソコン接続コード
 Mac Book(インテル)1、電源アダプター1、パソコン用ソフトケース
 携帯電話、充電器
 ※カメラは普段使っているものを持っていくべきです。重さを気にしない人はなおさらです。でも、今回はD300を持ったつもりがD700だったので、フレーミングに苦労しました。それから、私の携帯電話は070。電話は不自由しましたが、宿は光でネットさくさくでした。

C) ダイビング機材
 BC(30年前に購入したもの)、度付メガネ、シュノーケル
 ウェットスーツ(5mm)、ブーツ、軍手、メッシュバック

D) かばん
 60リットル、35リットル

E) 衣 類
 パンツ2、Tシャツ2、襟つきTシャツ1、ジーンズ1
 フリース1、ウィンドブレーカー1、サンダル1、靴下2、帽子1

F) その他
 時計(スントのデジタルコンパス付き)
 双眼鏡(ニコン)
 歯ブラシ、歯磨き粉、日焼け止め、
 無添加せっけん1、無添加シャンプーとリンス各1、
鬚剃り
 薬一式、アーミーナイフセット
 ガイドブック、地図

G) 現地で購入したもの
 ・とくになし
 ※飲食物をのぞく

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4 お 金
 町にある銀行や郵便局のATMで現金を引き出すことができますが、24時間利用できないので注意してください。引き出したい時間=遊びたい時間、が現実です。短期滞在なら、必要な金額を計算し、全額現金でもっていくべきです。カード払いできる場所も、非常に限られています。

かなりアバウトな予算
 船と宿は必ず必要です。その他は0円でも良いのですが、やっぱりツアーに参加するべきです。全く違う世界を味わうことができると思います。あなたがダイバーなら、迷わず全ての時間を費やして潜ってください。他のことはしなくて良いです。ハイキングを目的にしているなら、この次の項目をお読みください。
船(父島往復) 5.5万円
毋島に行くなら、プラス1万円
宿(2食付き) 0.9万円
※3泊なら2.7万円
昼食 400円〜1000円
※カップ麺とおにぎり(400円)
※予約したお弁当(1000円)
ダイビング 1.5万円(2本)
1.9万円(3本)
いろいろなツアー 3500円(数時間)
5000円〜7000円(半日)
10000円(1日)
レンタルバイク 2500円(1日)〜5000円(5日)
※連続して借りると急激に安くなる

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5 山歩き
 小笠原諸島がユネスコの世界自然遺産に指定された最大の理由は、山にあります。山を歩き、植物を中心に自然を楽しむのが王道です。しかし、その愉しみを満喫するためには、ある程度の植物に関する知識が必要です。小笠原以外のいくつかの山を歩き、そこの植生や特徴を知っていて、それらと比較することで愉しみが倍増します。季節によって植物の様子が大きく変わること、花盛りは1週間程度であること、標高や土壌のよって変わることを知っていなければ、本当の愉しみは得られません。

 山を目的にしているなら、自分1人で歩いても十分なところを、まず自分で歩いてください。きっと楽しいはずです。私はそれで十分に満足しました。ガイドなしでは歩けない区域もありますが、限られた時間しかお持ちでないなら、なおさら1人で歩くべきです。1人歩く自信がないなら、初めから小笠原を目的地にするべきではありません。もっと身近な山を歩き、植物を中心とした自然の見方を養ってから訪問してください。さもなければ、貴重な山を踏み固めてしまうだけのハイキングになります。

 なお、ガイドに専門的な知識は期待できません。ガイドになるための条件は、1年以上島民であること、年に1度の講習会に半日参加すること、以上2点だからです。別ページ『陸上の生物』もご覧ください。


6 海で遊ぶ
 海で遊ぶならシュノーケリングです。水中メガネとシュノーケルがあれば、そこそこ楽しめます。潜るならフィンを追加してください。これで、いわゆる3点セットの完成です。何も持っていない人は、現地でレンタルすることも可能です。1500円/3点ぐらいです。

 私はシュノーケリングも楽しみましたが、タンクを背負って潜るスキューバダイビングもしました。今回の旅の目的の1つは水中撮影したが、いずれの方法でもおおむね目的が達成でき、満足しています。別ページ『海洋の生物』や『ダイビングショップ』情報もご覧ください。ホェールウォッチンは別ページ『ザトウクジラ』、イルカは別ページ『イルカと泳ぐ』をどうぞ。

 その他、カヌーを初めとするさまざまな活動がありますが、いずれも小笠原で行うものではないと思います。海の生物達と触れあう時間をお勧めします。

 大切なことは、自分自身と自然を守ることです。生きたサンゴはとても危険です。基本的に触らないでください。大怪我をします。軍手や靴下を着用してください。長袖のシャツやズボンもあると良いでしょう。専用のウェットスーツやブーツがあれば完璧です。素肌を露出しないことが大切です。それと同時に、サンゴや水中で生活する生物を殺さないようにしましょう。そっと見て、そっと写真やビデオを撮るだけにしましょう。

 なお小笠原諸島の海の透明度は、冬よりも夏の方が高くなります。いわゆるボニンブルーは夏だけです。海流の関係で、他の海とは逆になっているそうです。水温が高くなるほど透明度が増す、ということだそうです。この話を聞いた時は、もう一度潜らなければいけない、と思いました。でも、クジラが見られるのは冬だから、やっぱり少なくとも2回行く必要があるのでしょう。


7 宿泊施設
 私は2つの場所にお世話になりました。父島は父島ペンション、毋島はラメーフです。いずれも心温かいおもてなしをして頂き、大変満足しています。私は変化を好むタイプですが、リピーターでも全く構いません。素敵な再会が期待できるからです。

上:父島ペンションの中庭から撮影したもの


上:毋島のラメーフの部屋(画像をクリックすると洗面所)


8 食料事情
 珍しいものや地元の食べ物は大好きですが、それを得るために時間を使うことはしません。海や山を散策することの時間を使ってしまうので、結果としてあまり面白い物は食べていないように思います。それでも、島寿司、カメ肉は食べてきたので、まあ、合格ということにしてください。

 なお、昼食は本気でカップ麺でも悪くないと思います。温かい麺は、早春のダイビングで冷えたお腹に最高です。プラスおにぎり1個と別カップのスープがあれば、本当に嬉しい限りです。


上:島寿司(奥)とカメ寿司(手前)


上:父島ペンションの夕食
 これで1300円だったと思います。日替わりメニューでよく考えてくれています。外食もしましたが、父島ペンションの方が断然美味しかったです。お値段も格段に安くて、文句のつけようがありません。ビールは冷えたものをどれだけでも持ち込み可能です。


上:毋島ラメーフの朝食
 朝も夜も凝ったメニューで、朝から食事だけで満足できる幸せを味わわせて頂きました。


9 交通機関
 レンタルバイクをお勧めします。ただし、ハイキングやシュノーケリングの目的地が明確に決まっているなら、バスを利用しても良いでしょう。私は、父島でレンタルバイク4日間、バス1往復(1日)、毋島でレンタルバイク1日で観光しました。その他はダイブショップのツアーに参加です。

写真右:東京都道の最南端に置いたバイク

   バイク、バスを使った観光
父島でレンタルバイク(1/4)
・父島全土を走り、シュノーケリング
・ウェザーステーションで夕日
父島でレンタルバイク(2/4)
・夜明け山の早朝ドライブ→ 日出
父島でレンタルバイク(3/4)
・おがわら丸のお見送り
父島でレンタルバイク(4/4)
・夜明け山の早朝ドライブ→ 日出
・小港海岸まで走る→ 中山峠へトレッキング
母島でレンタルバイク(1/1)
・南崎まで走る→ 周辺トレッキング
・北端まで走る→ 北部のトレッキング
・深夜にヘリポートまで走る →スターウォッチング  
10 ・早朝に南京浜、御幸之浜まで走る
11 父島でバスに乗る
・元町←(200円)→小港海岸 → 南部のトレッキング

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10 旅を終えて
 日本国内の旅だったことも原因の1つでしょう。とても安全で安定感のある旅でした。名古屋の自宅から乗船するまで、ほぼ3時間というのも驚きでした。小笠原を訪れるなら、明確な目的を持っていなければいけない、と感じました。計画されている方は、自分が何をしたいのか、もう一度しっかり確認してください。そして、十分に勉強してから旅行することをお勧めします。いわゆる観光旅行、山や海で遊ぶツアーに参加するだけ旅行とは違うと思います。自分が愉しむことで小笠原の自然を守る旅、になるように頑張ってください。

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 (c) 2012 fukuchi takahiro

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